配送業務をする上で避けて通れないのがクレームです。ドライバーの過失だけでなく、中にはお客様の勘違いや理不尽な主張が原因となって発生するケースも少なくありません。

業務委託として仕事を請けるドライバーにとっては、自分へのクレームが発生した際の適切な対処や仕事への影響など、気になるところではないでしょうか。

今回のコラムでは、業務委託ドライバーに寄せられるクレームについて詳しく解説するとともに、クレームを防ぐ方法も紹介します。

業務委託ドライバーに寄せられるクレーム

業務委託ドライバーとして働いていると、主に以下についてのクレームが寄せられるケースが多いです。

  • 荷物が届く時間
  • 荷物の中身
  • 宅配ボックス・不在票・電話
  • 配達員の態度
  • 配達員の身だしなみ
  • トラックの交通マナー

荷物が届く時間

大半の運送業者が時間指定サービスを展開している昨今、業務委託ドライバーが受けるクレームとして最も多いのが時間指定に関するものです。以下のような指定時間外の配達は、クレームのもととなります。

  • 近くを通ったついでに指定時間より早めに配達した
  • 早めに到着したため指定時間を待たずに配達した
  • 渋滞や悪天候で配達が遅れてしまった

指定時間より早く配達してしまうケースは、特にクレームが発生しやすい傾向にあります。というのも、お客様が指定時間内に在宅して荷物を受け取れるようスケジュールを調整している可能性が高いためです。

例えば、指定時間に間に合うよう用事を早く済ませて帰宅した、オフィスでの大事な商談を終えてから荷物を受け取れるよう指定時間を調整したといったケースが考えられます。

急いで帰宅したのに不在票が置かれていた、取引先と重要な話をしている最中にオフィスの呼び鈴が鳴ったといった事態が起これば、お客様は不快な思いをしてしまうでしょう。

早めに荷物を届ければ業務を終えられるという状況であっても、早く帰りたい気持ちを抑えて指定時間内に配達するのが望ましいです。また、指定された時間に遅れそうな場合は、前もってお客様に電話で伝えるといった配慮ができると良いでしょう。

荷物の中身

注文した商品と違うものが届いた、届いた荷物が破損していたといったクレームも少なくありません。届けた商品に不備があると、商品が届くのを楽しみに待つ個人のお客様や、届いた商品を一般消費者に向けて販売する法人のお客様の期待を裏切ることになります。

荷物の中身に関するクレームの中には、倉庫内でピッキングした商品が誤っていた、梱包する時点で既に破損していたといった配送以前の工程に原因があるものも多いです。

しかし、自身のミスでクレームを発生させてしまうリスクを最低限に抑える努力はするべきです。荷物が傷つかないよう丁寧に扱うだけでなく、伝票と荷札の読み合わせを繰り返し行い、可能であれば荷物を渡す際に以下の情報をお客様に直接確認できると良いでしょう。

  • お客様の名前
  • 届け先の住所
  • 差出人
  • 荷物の中身・個数

このように、配送ドライバーには荷物がお客様の手に届くまで細心の注意を払って取り扱うことが求められます。

宅配ボックス・不在票・電話

国土交通省が実施した調査によると、2023年10月の宅配便の再配達率は約11.1%。個人向けの荷物の配達を請け負うドライバーにとって、受取人の不在に伴う宅配ボックスや不在票の活用、電話でのやり取りは避けられないと言えるでしょう。

宅配ボックスや不在票、電話に関して発生し得るクレームとして、以下が挙げられます。

  • 宅配ボックスへの荷物の置き方が雑
  • 宅配ボックスのロック番号が異なり空けられない
  • 宅配ボックスへの配達や置き配を指定したのに不在票が届いた
  • 不在票が入っていなかった(不在票を誤ったポストに投函した)
  • 再配達の依頼をしたいのに配達員が電話に出ない

こうしたクレームを防ぐためには、丁寧に仕事をこなしてミスを防ぐことが大切です。具体的には、お客様が指定した配達方法や宅配ボックスの使用方法を念入りに確認する、不在票の記入や投函は実際の情報と照らし合わせながら正確に行うといった対策が求められます。

また、電話が繋がらなかったというクレームを防ぐため、運転中にも着信に気付けるよう通知音を大きめに設定しておくことをおすすめします。必要に応じて停車し折り返しの連絡を入れましょう。

なお、運転中に無理やり電話に出るのは控えてください。走行中の通話は道路交通法で禁止されており、違反すると罰金や罰則が課される可能性があります。

配達員の態度

荷物の受け渡しにはそれほど時間がかかるわけではありません。1日に何度も荷物を渡すドライバーにとっては何気ないやり取りだと感じられるかもしれませんが、荷物を受け取るお客様は配達員の表情や言葉遣いを意外としっかり観察しているものです。

乱暴な態度や言葉遣いはもってのほかですが、時間内に急いで配達しなければという焦りややり取りを早く済ませたい気持ちが態度に出てしまわないよう注意しましょう。

  • 笑顔で荷物を渡す
  • 丁寧な言葉遣いを意識する
  • ドアを開けっ放しにしない・丁寧に開閉する
  • 「インターホンを鳴らす→ドアを優しくノックする」と順を追って呼び出す

接客業のような質の高いマナーを取り入れる必要はありませんが、最低限上記のようなポイントは押さえておけると良いです。

配達員の身だしなみ

配達員の身だしなみに関するクレームも少なくありません。清潔感がないといった見た目に関する内容とは別で多いのが、たばこの臭いに関するクレームです。

普段たばこを吸わない方は特に、たばこの臭いが苦手な方も少なくありません。荷物を届けに来たドライバーからたばこの臭いがすることに抵抗を感じる方も多いでしょう。

加えて、荷物を梱包する段ボールは臭いを吸収しやすいという特徴を持ちます。身に付ける衣類や口に入れる食品を包む段ボールにたばこの臭いが染みついていると、不快に思われやすいです。

  • 消臭スプレーを積極的に利用する
  • 荷物を積むスペースと運転席の間にビニールの仕切りを設ける
  • 配達前や配達中は喫煙を控える

たばこを吸うのを辞められればベストですが、難しい方は上記のように対策してみてください。

トラックの交通マナー

配達時のお客様対応だけでなく、トラックの運転や駐車に関するクレームが寄せられることもあります。具体的には、ドライバーの運転が乱暴だった、駐車禁止エリアにトラックが停まっていたといった内容が多いです。

駐車禁止場所に配送車を停めないといった交通マナーの遵守を徹底するだけでなく、以下のような配慮もできると良いでしょう。

  • 道を譲るよう心がける
  • 道を譲ってもらったらお礼のアクションをする(会釈・手を挙げるなど)
  • 人通りの多い場所やマンションの目の前に駐車しない

思いやりを持って運転することは、他のドライバーや近隣住民への配慮を示すだけでなく、違反や事故を防いで自身のドライバーとしてのキャリアを守ることにも繋がります。

業務委託ドライバーがクレームを受けるとどうなる?

一般的に、正社員やアルバイトとして勤務するドライバーがクレームを受けると雇用元の企業に連絡が入り、場合によってはドライバーへ注意が入ります。個人で活動する業務委託ドライバーの場合は、依頼主から注意を受けることがほとんどです。

大規模な企業で正社員ドライバーとして勤務していると、クレームが原因で突然解雇されることは考えにくいです。

一方、業務委託ドライバーはクレームにより依頼主からの信頼を失い、契約を更新してもらえない場合もあります。中には、ドライバーに過失がないのに無理やり解雇される、悪質な依頼主から高額な違約金を請求されるといったケースも。

理不尽なクレームを防ぐのは難しいですが、クレームを受けるリスクを少しでも軽減できるよう注意して業務に励み、自分を守るようにしてください。

業務委託ドライバーがクレームを防ぐには

業務委託ドライバーがクレームを防止する方法として、以下の6点が挙げられます。

  • ミスのない仕事を心がける
  • トラックへの積み込みは丁寧に行う
  • 時間通りに要領よく配達する
  • 身だしなみに気を配る
  • 忙しくても丁寧な接客を意識する
  • 交通マナーを遵守する

トラックの積み込みに関しては、やり方を工夫するだけで配送や荷下ろしの際に荷物に加わる衝撃を軽減させ、破損を防止することが可能です。具体的には、以下のポイントを意識すると良いです。

  • 荷物どうしの隙間を減らす
  • 重い荷物を下に・軽い荷物を上にのせる
  • 最初に配達する荷物を手前に・後に配達する荷物を奥にのせる
  • 荷物の形に合わせて積み方を変える
  • 荷崩れ予防グッズを使用する

トラックの荷物の積み方にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。例えば、ピンホール積みは荷物の温度を一定に保ちたい時に適しており、交互積みは横向きに加わる力に強いです。運搬する荷物の種類や量に応じて、適切な積み方を取り入れてみましょう。

荷崩れ防止ベルト、滑り止めのシートやテープ、保護緩衝材といった荷崩れ予防グッズは、インターネット通販で多数販売されていますので、ぜひチェックしてみてください。

丁寧な仕事で信頼される業務委託ドライバーに

業務委託ドライバーに非がないにも関わらず、理不尽なクレームが発生するケースも少なくありません。そのため、業務委託ドライバーに寄せられるクレームを完全に防ぐことは難しいと言えます。

しかし、お客様や近隣住民への思いやりを忘れずに仕事をすれば、クレームの発生リスクを抑えることが可能です。今回ご紹介したポイントを押さえて常に丁寧な仕事を心がけ、お客様や依頼主に信頼される業務委託ドライバーを目指してみてください。