個人事業主の軽貨物ドライバーとして稼働することを検討している方の中には、委託元の運送会社との間で発生する違約金に関して不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

個人ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、不当に高額な違約金を請求する悪質なところもあります。委託元に脅されて違約金の支払いに同意してしまい、そのまま泣き寝入りしてしまうといったケースも決して珍しくありません。

今回のコラムでは、個人事業主として活動する軽貨物ドライバーにぜひ知っておいてほしい、起こり得る違約金トラブルと、請求されたときに支払う必要があるかの考え方、相談先について詳しく解説していきます。

軽貨物ドライバ―が違約金を請求される事例

個人事業主の軽貨物ドライバ―が運送会社から違約金を請求されるのは、委託元に損害が発生する以下のようなケースです。

  • 契約期間中に途中で辞めた
  • 契約期間中に交通事故や労働災害に遭った
  • 自身が退職することで委託元の人員不足が悪化した

ドライバ―が途中で辞めたり病気やケガで働けなくなったりすると、運送会社は急遽別のドライバ―に案件を割り振らなければならなくなります。

慢性的な人手不足に悩まされている運送会社は特に、高額な違約金で代わりの人材の採用にかかるコストをまかなったり、ドライバーを引き留めたりするところが多いようです。

請求された違約金は支払う必要がある?

契約書に違約金の定めがあり、その内容に合意して契約していれば、違約金は原則として支払う義務があります。民法では、違約金は契約違反があったときの損害賠償の額をあらかじめ決めたもの(賠償額の予定)と推定されるためです。ただし、次の3つのどれかに当てはまる場合は、請求された金額をそのまま支払う必要はありません。

契約書に違約金の定めがない

契約書に違約金の条項がなければ、あらかじめ決めた金額を請求される根拠はありません。委託元が求められるのは、ドライバーの契約違反によって実際に生じた損害の賠償に限られ、その損害がいくらなのかは委託元の側が示す必要があります。「辞めるなら違約金」と口頭で言われただけなら、まず契約書のどこに書かれているのかを確認しましょう。

金額が実際の損害に比べて高すぎる

違約金の額が、ドライバーが辞めたことで委託元に実際に生じる損害(代わりのドライバーの手配にかかる費用など)と比べて著しく高い場合、その定めは公序良俗に反するとして無効になることがあります(民法第90条)。たとえば「3か月以内に辞めたら10万円」という定めがあるなら、委託元に実際にどれだけの損害が出るのかを説明してもらい、金額と見比べてみてください。

働き方の実態が「労働者」に当たる

業務委託という契約でも、実際の働き方が会社員と変わらなければ、労働基準法上の「労働者」と判断されることがあります。その場合、労働基準法第16条により、違約金を定めること自体が禁止されています。労働者に当たるかどうかは、契約の名前ではなく、主に次のような働き方の実態から判断されます。

  • 配達の依頼や業務の指示を断る自由があるか
  • 配達の方法や順番を細かく指示・管理されているか
  • 勤務する場所や時間を指定され、拘束されているか
  • 自分の代わりに別の人に配達させることが認められているか
  • 報酬が、配達した個数ではなく働いた時間で決まっているか

たとえば、配達の依頼を断れず、出勤時間と担当ルートを委託元に決められ、時間に応じた報酬を受け取っている働き方は、労働者と判断される方向の事情になります。

請求を受けても、その場で支払ったり、支払いを約束する書面にサインしたりせず、契約書の該当箇所と請求額の根拠を書面で示してもらいましょう。

出典:e-Gov法令検索「民法」(第90条・第420条)

出典:厚生労働省「労働基準法第16条(賠償予定の禁止)」

出典:大阪労働局「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」

車両リースの中途解約金にも注意

委託元やその紹介先とリース契約を結んで軽バンを使っている場合は、業務委託の違約金とは別に、リース契約の中途解約金がかかることがあります。リース契約は原則として途中で解約できない契約で、解約するときは残りの期間のリース料に相当する額などをまとめて支払う取り決めになっているのが一般的です。

業務委託契約とリース契約が別々の契約であれば、業務委託を辞めてもリース契約は終わりません。辞めたあともリース料の支払いが続いたり、解約金を一括で請求されたりするのはこのためです。契約前に、次の3点を確認しておきましょう。

  • 業務委託契約とリース契約が別の契約になっているか
  • 業務委託を終えたとき、リース契約はどうなるのか
  • リースを途中で解約するといくら支払うのか

リース契約の注意点は以下の記事でも詳しく紹介しています。

【軽貨物ドライバー】違約金トラブルの要因とは

先述したような違約金トラブルが発生する最大の要因として、契約書の内容の確認を怠ったまま運送会社と契約を結んでしまうことが挙げられます。

契約書は、運送会社と軽貨物ドライバ―が条件面でお互いに同意したことを客観的に証明する役割を担います。

個人事業主には労働基準法が適用されない場合が多く、個人事業主のドライバ―の稼働条件は契約書の内容をベースに決定されることが一般的。運送会社に「契約書に書かれているから」と言われると、無理な条件であっても従わざるを得ないケースもあるようです。

実際、軽貨物ドライバーが契約書の内容を十分に理解せずに契約を結んでしまったために、悪質な運送会社につけこまれて高額な違約金を請求されるというケースが後を絶ちません。

契約を結ぶ前に契約書の内容を隅々まで読み込むことは、違約金トラブルに巻き込まれるリスクを減らす最も有効な方法だと言えるでしょう。運送会社との契約書を確認する際に必ずチェックしておくべき重要なポイントについて、この後詳しく解説していきます。

業務委託契約書でチェックすべきポイント

委託元の運送会社との契約書を読み込む際にチェックしておくべきポイントとして、特に重要なのは以下の6点です。

  • 報酬が明確に記載されているか
  • 報酬を改訂できる条項が含まれているか
  • 荷物の責任の所在が記載されているか
  • 交通事故や労働災害の責任の所在が明確であるか
  • 競業避止義務が設けられていないか
  • 中途解約について不当な条件が含まれていないか

報酬が明確に記載されているか

軽貨物ドライバーの報酬に関しては、以下の項目が明記されているかどうかを必ず確認しておきましょう。

  • 金額
  • 締め日
  • 支払い日
  • 支払い方法

個人事業主の約7割が報酬の未払いに関するトラブルを経験したことがあり、そのうちの約4割が泣き寝入りをしていると言われています。軽貨物ドライバーも例外ではなく、業務を完了したのに一向に報酬が支払われないというケースも少なくありません。

報酬に関する最低限の項目が明記されている契約書があれば、委託元に未払い分の報酬を請求し、回収できる確率がぐっと高くなります。

出典:Business Insider Japan「7割のフリーランスが報酬トラブルあり、損保ジャパンが日本初の保険」(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の2018年12月の調査、回答者109人)

報酬を改訂できる条項が含まれているか

会社に直接雇用されるドライバ―とは異なり、個人事業主の軽貨物ドライバーは配送車のガソリン代や駐車場代、自動車税といった費用を自身で負担しなければなりません。

ガソリン代や駐車場代の値上げ、増税などが発生して経費がかさんでしまうと、その分ドライバ―自身の手元に入ってくるお金は減ってしまいます。軽貨物ドライバーの案件をメインの収入源としている方にとっては特に、こうした費用の高騰は死活問題だと言えます。

経済情勢の変動や燃料の高騰などに応じて報酬を改訂できる条項が契約書に盛り込まれていれば、運送会社に報酬の値上げを交渉することが可能です。

荷物の責任の所在が記載されているか

普段どれだけ丁寧な業務遂行を心掛けていても、誤って荷物を破損させたり紛失したりしてしまうリスクをなくすことはできません。お客様へ配送する荷物に不備があった場合の責任の所在についても、確実にチェックしておくべきです。

配送を担う軽貨物ドライバーが責任を負うことが一般的ですが、委託元への高額な違約金の支払いといった不当な内容が盛り込まれていないことを確かめておきましょう。

加えて、万が一の事態に備えて荷物の破損や紛失などを補償してくれる貨物保険や賠償責任保険に加入しておくとより安心です。

交通事故や労働災害の責任の所在が明確であるか

交通事故や労働災害に関しても同様で、ドライバ―自身に責任が課されることが一般的です。契約書に記載されている内容を念入りに確認するとともに、不測の事態に補償を受けられるよう保険に入っておくことをおすすめします。

自賠責保険や任意保険だけでなく、交通事故の相手との交渉に備え弁護士保険にも加入するのが理想です。

競業避止義務が設けられていないか

個人ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、案件数が少なくドライバ―に安定的に業務を割り振れないところも存在します。個人事業主として活動するドライバーは、業務量を確保するため複数の委託元と契約を結ぶことが一般的です。

しかし、運送会社によっては契約書で競業避止義務を定めているところもあります。こうした委託元と契約を結ぶと、他の運送会社から案件を請けられなくなってしまうため注意が必要です。

中途解約について不当な条件が含まれていないか

ドライバ―の都合で契約を途中で終了する場合、運送会社には案件を他のドライバ―に割り振る、代わりの人材を探すといった余計な手間が発生します。

むやみに中途解約されるのを防止するため、業務委託契約書には中途解約できるタイミングや違約金に関して記されていることが多いです。

ただし、委託元によっては高額な違約金の支払い義務や、いつまでも解約できないといった内容を契約書に盛り込んでいることもあります。

悪質な運送会社の中には、ドライバ―にとって不都合な内容を契約書の目立たない位置に記載しているところも。契約書は細部まで漏れなく確認するべきです。

契約を途中で辞めると決めたら、契約書に定められた予告期間を守って解約を伝えましょう。伝えた日と内容が残るよう書面やメールで通知しておくと、後から違約金の有無で争いになったときの証拠になります。辞めるときの手順は以下の記事で詳しく紹介しています。

フリーランス法で定められた取引のルール

2024年11月1日に施行されたフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、従業員を雇わずに1人で業務委託を受けている軽貨物ドライバーを守る法律です。委託元の運送会社には、次のルールが課されています。

  • 報酬の額や支払期日などの取引条件を、書面やメールで明示する
  • 報酬は、業務の提供を受けた日から60日以内に支払う
  • 6か月以上続く業務委託を途中で解除する、または更新しない場合は、30日前までに予告する(ドライバーは理由の開示を求められる)

取引条件を書面で示さない、報酬の支払期日を決めていないといった会社は、このルールに反しています。契約書を受け取ったら、違約金の条項とあわせて、報酬の額と支払期日が書かれているかを確認しましょう。

出典:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」

軽貨物ドライバーが違約金を請求された際の対処法

どれだけドライバ―側が注意していても、不当な違約金を請求されるリスクは残念ながらゼロにはなりません。契約書をしっかりと読み込まずに契約を結んでしまった、委託元が契約書の規定を守ってくれないといったケースも十分考えられるでしょう。

そういった場合は、以下のように対処することをおすすめします。

  • 国民生活センターに相談する
  • 公正取引委員会・中小企業庁に申し出る
  • 弁護士に相談する

フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省の委託を受けて第二東京弁護士会が運営する相談窓口です。業務委託のトラブルについて、弁護士に無料で相談できます。電話(0120-532-110、平日9:30〜16:30)のほか、メールやビデオ通話でも相談でき、委託元との間に入って話し合いをまとめる和解あっせんも無料で利用できます。違約金トラブルに遭ったら、最初に頼りたい窓口です。

取引条件が書面で示されていない、報酬が支払期日までに支払われないなど、フリーランス法に違反している疑いがある場合は、公正取引委員会や中小企業庁の窓口に申し出ることもできます。

違約金トラブルが複雑化してしまったら、法律のプロである弁護士を頼ると良いでしょう。相談窓口では解決が難しい複雑な事例について相談に乗ったり、必要に応じて訴訟を起こしたりしてくれます。

出典:フリーランス・トラブル110番

軽貨物の違約金に関するよくある質問

軽貨物の違約金に関するよくある質問について回答します。違約金について不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

Q.違約金を払えないとどうなる?

支払わずにいると、委託元から督促を受け、裁判所を通じた支払督促や訴訟を起こされることがあります。裁判で支払いが認められたのに支払わなければ、預金などの財産を差し押さえられる可能性もあります。金額や根拠に納得できないときほど放置せず、フリーランス・トラブル110番や弁護士に相談してください。

Q.業務委託を辞めるときは必ず違約金がかかる?

必ずかかるわけではありません。違約金がかかるのは、契約書に違約金の定めがあり、その条件に当てはまる辞め方をした場合です。契約書の解約条項で、何日前までに申し出れば違約金がかからないのかを確認し、その期間を守って書面やメールで解約を伝えましょう。

契約書を入念に確認して違約金トラブルを防止しよう

軽貨物ドライバーと運送会社との違約金トラブルを完全に防止することは難しいです。しかし、契約を結ぶ前に契約書を念入りに確認しておけば、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に軽減することができます。

個人事業主のドライバ―にとって、契約書の内容を把握しておくことは、いざという時に自分の身を守ることに繋がります。今回お伝えしたポイントを漏れなく確認し、不明点は委託元の担当者に質問し、疑問や不安を全て解消してから契約するようにしてください。

違約金を請求されて支払うべきか迷ったときは、その場で応じず、フリーランス・トラブル110番などの窓口に相談してから判断してください。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。