個人事業主の軽貨物ドライバーとして稼働することを検討している方の中には、委託元の運送会社との間で発生する違約金に関して不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
個人ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、不当に高額な違約金を請求する悪質なところもあります。委託元に脅されて違約金の支払いに同意してしまい、そのまま泣き寝入りしてしまうといったケースも決して珍しくありません。
今回のコラムでは、個人事業主として活動する軽貨物ドライバーにぜひ知っておいてほしい、起こり得る違約金トラブルとその対処法について詳しく解説していきます。
目次
軽貨物ドライバ―が違約金を請求される事例
個人事業主の軽貨物ドライバ―が運送会社から違約金を請求されるのは、委託元に損害が発生する以下のようなケースです。
- 契約期間中に途中で辞めた
- 契約期間中に交通事故や労働災害に遭った
- 自身が退職することで委託元の人員不足が悪化した
ドライバ―が途中で辞めたり病気やケガで働けなくなったりすると、運送会社は急遽別のドライバ―に案件を割り振らなければならなくなります。
慢性的な人手不足に悩まされている運送会社は特に、高額な違約金で代わりの人材の採用にかかるコストをまかなったり、ドライバ―を引き留めたりするところが多いようです。
【軽貨物ドライバー】違約金トラブルの要因とは
先述したような違約金トラブルが発生する最大の要因として、契約書の内容の確認を怠ったまま運送会社と契約を結んでしまうことが挙げられます。
契約書は、運送会社と軽貨物ドライバ―が条件面でお互いに同意したことを客観的に証明する役割を担います。
個人事業主には労働基準法が適用されない場合が多く、個人事業主のドライバ―の稼働条件は契約書の内容をベースに決定されることが一般的。運送会社に「契約書に書かれているから」と言われると、無理な条件であっても従わざるを得ないケースもあるようです。
実際、軽貨物ドライバーが契約書の内容を十分に理解せずに契約を結んでしまったために、悪質な運送会社につけこまれて高額な違約金を請求されるというケースが後を絶ちません。
契約を結ぶ前に契約書の内容を隅々まで読み込むことは、違約金トラブルに巻き込まれるリスクを減らす最も有効な方法だと言えるでしょう。運送会社との契約書を確認する際に必ずチェックしておくべき重要なポイントについて、この後詳しく解説していきます。
業務委託契約書でチェックすべきポイント
委託元の運送会社との契約書を読み込む際にチェックしておくべきポイントとして、特に重要なのは以下の6点です。
- 報酬が明確に記載されているか
- 報酬を改訂できる条項が含まれているか
- 荷物の責任の所在が記載されているか
- 交通事故や労働災害の責任の所在が明確であるか
- 競業避止義務が設けられていないか
- 中途解約について不当な条件が含まれていないか
報酬が明確に記載されているか
軽貨物ドライバーの報酬に関しては、以下の項目が明記されているかどうかを必ず確認しておきましょう。
- 金額
- 締め日
- 支払い日
- 支払い方法
個人事業主の約7割が報酬の未払いに関するトラブルを経験したことがあり、そのうちの約4割が泣き寝入りをしていると言われています。軽貨物ドライバーも例外ではなく、業務を完了したのに一向に報酬が支払われないというケースも少なくありません。
報酬に関する最低限の項目が明記されている契約書があれば、委託元に未払い分の報酬を請求し、回収できる確率がぐっと高くなります。
報酬を改訂できる条項が含まれているか
会社に直接雇用されるドライバ―とは異なり、個人事業主の軽貨物ドライバーは配送車のガソリン代や駐車場代、自動車税といった費用を自身で負担しなければなりません。
ガソリン代や駐車場代の値上げ、増税などが発生して経費がかさんでしまうと、その分ドライバ―自身の手元に入ってくるお金は減ってしまいます。軽貨物ドライバーの案件をメインの収入源としている方にとっては特に、こうした費用の高騰は死活問題だと言えます。
経済情勢の変動や燃料の高騰などに応じて報酬を改訂できる条項が契約書に盛り込まれていれば、運送会社に報酬の値上げを交渉することが可能です。
荷物の責任の所在が記載されているか
普段どれだけ丁寧な業務遂行を心掛けていても、誤って荷物を破損させたり紛失したりしてしまうリスクをなくすことはできません。お客様へ配送する荷物に不備があった場合の責任の所在についても、確実にチェックしておくべきです。
配送を担う軽貨物ドライバーが責任を負うことが一般的ですが、委託元への高額な違約金の支払いといった不当な内容が盛り込まれていないことを確かめておきましょう。
加えて、万が一の事態に備えて荷物の破損や紛失などを補償してくれる貨物保険や賠償責任保険に加入しておくとより安心です。
交通事故や労働災害の責任の所在が明確であるか
交通事故や労働災害に関しても同様で、ドライバ―自身に責任が課されることが一般的です。契約書に記載されている内容を念入りに確認するとともに、不測の事態に補償を受けられるよう保険に入っておくことをおすすめします。
自賠責保険や任意保険だけでなく、交通事故の相手との交渉に備え弁護士保険にも加入するのが理想です。
競業避止義務が設けられていないか
個人ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、案件数が少なくドライバ―に安定的に業務を割り振れないところも存在します。個人事業主として活動するドライバーは、業務量を確保するため複数の委託元と契約を結ぶことが一般的です。
しかし、運送会社によっては契約書で競業避止義務を定めているところもあります。こうした委託元と契約を結ぶと、他の運送会社から案件を請けられなくなってしまうため注意が必要です。
中途解約について不当な条件が含まれていないか
ドライバ―の都合で契約を途中で終了する場合、運送会社には案件を他のドライバ―に割り振る、代わりの人材を探すといった余計な手間が発生します。
むやみに中途解約されるのを防止するため、業務委託契約書には中途解約できるタイミングや違約金に関して記されていることが多いです。
ただし、委託元によっては高額な違約金の支払い義務や、いつまでも解約できないといった内容を契約書に盛り込んでいることもあります。
悪質な運送会社の中には、ドライバ―にとって不都合な内容を契約書の目立たない位置に記載しているところも。契約書は細部まで漏れなく確認するべきです。
軽貨物ドライバーが違約金を請求された際の対処法
どれだけドライバ―側が注意していても、不当な違約金を請求されるリスクは残念ながらゼロにはなりません。契約書をしっかりと読み込まずに契約を結んでしまった、委託元が契約書の規定を守ってくれないといったケースも十分考えられるでしょう。
そういった場合は、以下のように対処することをおすすめします。
- 国民生活センターに相談する
- 弁護士に相談する
消費者問題や暮らしの問題に関する調査や情報提供を行ってくれる国民生活センターは、軽貨物ドライバーの業務委託契約に伴うトラブルについて相談に乗ってくれます。以下のようなサポート制度も利用でき、違約金トラブルに遭ったら最初に頼るべき機関です。
- ADR(裁判外紛争解決手段):委託元との間に入り裁判を起こさず仲裁してくれる
- 消費者団体訴訟制度:委託元と連絡がつかない場合に代わりに裁判を起こしてくれる
違約金トラブルが複雑化してしまったら、法律のプロである弁護士を頼ると良いでしょう。国民生活センターでは対応が難しい複雑な事例について相談に乗ったり、必要に応じて訴訟を起こしたりしてくれます。
契約書を入念に確認して違約金トラブルを防止しよう
軽貨物ドライバーと運送会社との違約金トラブルを完全に防止することは難しいです。しかし、契約を結ぶ前に契約書を念入りに確認しておけば、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に軽減することができます。
個人事業主のドライバ―にとって、契約書の内容を把握しておくことは、いざという時に自分の身を守ることに繋がります。今回お伝えしたポイントを漏れなく確認し、不明点は委託元の担当者に質問し、疑問や不安を全て解消してから契約するようにしてください。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
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