未経験から物流・運送業界への転職を目指す方や、キャリアアップを視野に入れている現役ドライバーの中には、資格取得を検討している方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、物流・運送業界で役立つ資格を一覧形式でわかりやすくご紹介します。興味のある分野や将来の方向性を踏まえて、あなたに合った資格を見つける参考にしてみてください。
※本記事では2025年4月時点の情報を掲載しています。
目次
物流・運送業界で資格は必要?
運送業には、自動車免許さえあればすぐに始められる職種も多く存在します。しかし、関連する資格を取得することで担当できる業務の幅が広がり、より多彩なキャリアパスを描けるようになるでしょう。
特に注意が必要なのが、個人事業主として開業を検討している場合です。一般貨物自動車運送事業および特定貨物自動車運送事業を始めるには、以下の資格・条件が必要となります。
- 運行管理者資格の取得
- 整備管理者資格の取得(5台以上の一般貨物自動車を使用する場合)
- 法令試験への合格
一方、軽貨物ドライバーとして貨物軽自動車運送事業を始める場合には、自動車免許以外に必須の資格はありません。比較的開業のハードルが低く、始めやすい職種と言えるでしょう。
運送業の資格の分類

運送業に限らず、資格はその管轄によって以下の3つに大別することが可能です。
- 国家資格:国が認定する資格
- 公的資格:国以外の公的機関(地方自治体など)が認定する資格
- 民間資格:民間団体・企業が認定する資格
一般的に、難易度や社会的信頼度は「国家資格」→「公的資格」→「民間資格」の順に高い傾向があります。ただし、社会的認知度や業界内での評価、転職活動における優位性などは資格によってまちまちです。
資格を選ぶ際は取得目的やキャリアプランを明確にしつつ、各資格の特性をよく調べた上で判断することが大切です。
物流・運送の現場で活躍するのにおすすめの資格一覧

ここからは、物流・運送の現場で活躍する上でおすすめの資格を一覧で紹介していきます。
自動車免許
自動車免許は、全ての配送ドライバーにとって当然ながら必須の資格です。基本的には、普通自動車免許があれば業務に従事することができますが、普通自動車免許では総重量3.5t未満の車両しか運転できず、業務に使用できる配送車が限られています。
以下のような免許を取得しておくことで、運転可能な車両の種類が増え、活躍の場が広がるでしょう。
- 準中型免許:車両総重量3.5t超〜7.5t未満の車両を運転できる
- 中型免許:車両総重量7.5t以上~11t未満の車両を運転できる
- 大型免許:車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上の車両を運転できる
- けん引免許:車両総重量750kgを超える被けん引車両をけん引できる
- 大型特殊免許:公道で特殊自動車(大型フォークリフトなど)を運転できる
- 玉掛け免許:クレーンなどのフックに荷物を掛けたり外したりする玉掛け作業を行える
なお、取得条件や受験資格がそれぞれ異なる点に留意しておかなければなりません。例えば、大型免許を取得するには、普通・準中型・中型・大型特殊免許のいずれかを取得済みで、かつ運転経歴が通算3年以上あることが必須とされています。
フォークリフト運転技術者
各都道府県労働基準局安全課が運営する、最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転するために必要な国家資格です。倉庫や工場などで荷物の積み下ろしや移動に欠かせません。
特にパレット単位での荷役作業がある中型・大型トラックの運転手にとっては、取得しておいて損はない資格と言えるでしょう。試験の合格率は95%程度とされており、国家資格の中では難易度は低めです。
対象 | 18歳以上(学歴・実務経験は不要) |
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取得の流れ | 学科(選択式)+実技(コース走行・荷役操作) |
費用 | 約3万〜5万円(講習機関により異なる) |
危険物取扱者
危険物取扱者資格は、ガソリン・軽油・灯油をはじめとする危険物の取り扱いや運搬に必要な国家資格です。以下の3種類があり、それぞれ取り扱える危険物の種類が異なります。
- 甲種:すべての種類の危険物
- 乙種:全6類に分けられた指定の危険物
- 丙種:乙種第4類危険物(ガソリン・アルコール類など)のうち指定された危険物
特に「乙種第4類(通称:乙4)」は、燃料を扱うガソリンスタンドやタンクローリー輸送などで必須となります。取得しておくと化学工場やガソリンスタンドへの輸送といった業務に挑戦できるほか、資格手当や転職時の評価アップにも繋がりやすいです。
対象 | 甲種:大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者 乙種・丙種:誰でも受験可能 |
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取得の流れ | 筆記試験 中央試験センター(東京)及び道府県支部にて受験可能 |
費用 | 甲種:7,200円 乙種:5,300円 丙種:4,200円 |
【物流・運送業】管理業務に関連する資格一覧

続いて、現場に出向くドライバーの状況や荷物の動きを管理する業務に従事する上で取っておくべき資格をご紹介します。
運行管理者・運行管理補助者
運行管理者は、トラック・バス・タクシーなどの事業用自動車の安全運行を管理する国家資格です。ドライバーの勤務時間・休憩・健康管理・車両点検などを指導・監督し、事故やトラブルを未然に防ぐ役割を担います。
運行管理者制度により、一般・特定貨物自動車運送事業者は事業所の規模に応じた人数の運行管理者を配置することが義務付けられています。運送業界では非常に重宝されやすく、また個人事業主として開業を検討しているドライバーにとっては必須となる資格です。
合格率は40%程度とされており、国家試験の中では比較的難易度が高めです。
なお、運行管理補助者は運行管理者の業務をサポートする立場であり、一部の業務に携わることはできますが、職務を完全に代行することはできません。
対象 | 貨物運送事業での運行管理補助者の実務経験が1年以上ある、もしくは運行管理者基礎講習を修了した者 |
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取得の流れ | 筆記試験(年2回) 全国の会場にて受験可能 |
費用 | 基礎講習:1〜2万円 受験料:6,600円 システム利用料:660円 |
整備管理者
整備管理者は事業用車両や車庫の点検や整備、管理を行う役割を担う資格です。国土交通省により、5台以上の一般貨物自動車を保有する運送会社には選任が義務付けられています。
ある程度の規模で事業を行う運送会社にとっては必須ということもあり、運行管理者と同様ニーズの高い資格の1つです。
対象 | 自動車整備士(級・2級・3級)の資格保有者、もしくは整備管理に関する2年以上の実務経験がある者 |
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取得の流れ | 整備管理者選任前研修(自動車整備士の資格が無い方のみ・年数回) 各運輸支局で受講可能 |
費用 | 選任前研修の教材費:1,500円前後 選任後研修の教材費:3,000円前後 |
物流技術管理士
物流技術管理士は、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が認定する物流の総合マネジメント資格です。「物流管理者および物流技術者に求められる、物流・ロジスティクス全体に関する専門知識とマネジメント技術を体系的に学べる」とされています。
物流コストの削減や業務効率化を実現するための実践的なスキルを習得することが可能。管理職・現場リーダー・ロジスティクス全体を俯瞰するポジションへのキャリアアップも目指せます。
未経験者でも学びやすいカリキュラムが用意されており、物流業界で長く活躍していきたい方におすすめの資格です。
対象 | 物流実務経験を2年程度有する者で、物流に関する業務に従事している者 |
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取得の流れ | 物流技術管理士資格認定講座 (オンライン+東京・大阪・名古屋) 認定試験 |
費用 | 会員:550,000円 非会員:660,000円 |
物流経営士
全日本トラック協会(JTA)が認定する「物流経営士」は、トラック運送業界の経営者や管理職を対象とした実践的な資格です。事業戦略、財務管理、人材マネジメント、法令遵守など、経営に必要な幅広い知識と実務力を体系的に習得できます。
将来的に独立を目指すベテランドライバーや、現場のリーダー職からステップアップを図りたい方にも適した資格です。経営改善はもちろん、物流現場でのコンサルティングや教育指導の場面でも大いに役立ちます。
対象 | 物流部門に関連する業務に2年程度の実務経験を有する方 など |
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取得の流れ | 物流経営士資格認定講座実施規程の受講 認定試験 |
費用 | 会員:350,000円 非会員:400,000円 |
転職・キャリアアップに有利なその他資格一覧
上記の他に、物流や運送業界で転職やキャリアアップに有利な資格を一覧でまとめました。自身の興味のある業務領域に応じて、気になる資格をチェックしてみてください。
身につく・スキル | 対象者 | 取得の流れ | 費用 | |
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消防整備士 | 消防関連設備の点検・整備・工事 | 甲種:大学を卒業した者、実務経験を有する方など 乙種:誰でも受験可能 |
認定試験 ※東京の中央試験センター及び道府県支部で受験可能 |
甲種: 6,600円 乙種:4,400円 |
衛生管理者 | 事業場の衛生全般の管理 | 大学または高等専門学校を卒業、かつ1年以上の労働衛生の実務に従事した者など | 認定試験 毎月・各地の安全衛生技術センターで受験可能 |
8,800円 |
ロジスティクス管理 | 物流の概念と物流管理・在庫管理・物流システム管理など | 誰でも受験可能 | 認定試験 全国47都道府県の会場で受験可能 |
2級:8,800円 3級:7,920円 ※別途手数料:400円 |
ロジスティクスオペレーション | 物流センター計画・物流センターの管理と運営など | 誰でも受験可能 | 認定試験 全国47都道府県の会場で受験可能 |
2級:8,800円 3級:7,920円 ※別途手数料:400円 |
ロジスティクス経営士 | ロジスティクスに関わる新たな戦略の立案・事業の企画・実行など | 物流技術管理士または国際物流管理士の資格取得後、実務を3年以上経験した幹部候補の方など | 講義(14日間) 面接試験 認定試験 |
会員:440,000円 非会員:550,000円 |
グリーンロジスティクス管理士 | 環境負荷の低減施策立案・推進・評価 | 製造業、流通業、物流業のロジスティクス・物流・環境部門のリーダー層の方 | 講義(11日間) 認定試験 |
会員:247,800円 非会員:294,000円 |
ロジスティクス・マテリアル・ハンドリング管理士 | 商品集荷・包装・通関・輸送などの管理・効率化の提案・実施 | 物流基礎学力を有し、物流関連業務に2年以上の実務経験を有する者など | 講義(9日間) プレゼンテーション |
会員:165,000円 非会員:220,000円 |
包装管理士 | 包装や梱包に関する知識・技能 | 高卒以上の22歳以上かつ満3年以上の包装関連の実務経験を有する方など | オンライン講座 合宿研修 レポート提出 オンライン補講 |
会員:341,000円 非会員:543,400円 |
【運送業】資格を取得して収入・キャリアアップを目指そう
配送ドライバーとして働く場合、基本的に必要な資格は自動車免許のみですが、物流・運送業界の業務は配送だけにとどまりません。現場管理や整備、経営など、さまざまな領域に携わるチャンスがあり、資格を取得することでその可能性を大きく広げることができます。
「ドライバーはキャリアアップが難しい」というイメージを持たれがちですが、ご紹介したような資格を取得することで、多様なキャリアの道が開かれます。ぜひ、今後の自分の可能性を広げる一歩として、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者

軽カモツネット編集部
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