軽貨物ドライバーにとって、シートベルトの着用ルールは業務の安全性だけでなく、法令遵守の観点からも極めて重要です。一方、「どの区間なら外してよいのか」「免除規定は自分の業務にも当てはまるのか」など、疑問が生じやすいポイントも多くあります。
本記事では、道路交通法・政令・国家公安委員会規則に基づく正しい判断基準を整理し、現場で注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
目次
軽貨物ドライバーにもシートベルトの着用義務はある?

軽貨物ドライバーにとって、日々の業務での安全確保は最優先事項です。一方、「軽貨物は営業車だから特例があるのでは?」と疑問を持つ方も少なくありません。
ここでは、シートベルト着用義務の基本的な内容と、軽貨物における特例の有無を見ていきましょう。
シートベルト着用義務とは?
シートベルト着用義務とは、道路交通法第71条で定められた「自動車に乗るすべての人が備え付けのベルトを必ず着用する」という基本ルールを指します。2008年の法改正によって、後部座席を含む全席での着用が明確に義務化され、安全確保の基準が一段と強化されました。
事故時の衝撃を抑え、乗員の安全を確保するために必須の制度であり、違反すれば運転者に違反点数などの処分が科されます。
軽貨物(黒ナンバー)にも着用義務はある
軽貨物(黒ナンバー)であっても、シートベルトの着用義務は原則としてすべての乗員に適用されます。道路交通法では、自家用・営業用を問わず、運転者と同乗者は備え付けのシートベルトを装着することが求められています。
ただし、貨物の集荷や配達など、短距離で乗り降りが頻繁に発生する業務については、政令・規則により一定の区間で装着義務が免除される場合があります。
シートベルトを外してもいいケースとは?

軽貨物ドライバーの業務は、集荷や配達など短距離での移動が多く、乗り降りを繰り返す場面も少なくありません。そのため、「どのような場合であればシートベルトを外して運転しても違反にならないのか」を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、軽貨物ドライバーがシートベルトを外してもいいケースについて詳しく見ていきましょう。
道路交通法の例外規定
道路交通法では、運転中のシートベルト着用が原則義務とされていますが、一定の条件下では例外が認められています。たとえば、運転者が病気やケガ、妊娠などの理由で着用が適さない場合や、救急車や消防車など緊急車両の運転時などが該当します。
「その他政令」で示される例外
例外規定に加えて、道路交通法第26条の「その他政令」で定められた業務に従事する場合も、シートベルトの着用が免除されるケースがあります。代表的なものが、郵便物の集配など、短距離で乗降を繰り返す業務です。
国家公安委員会規則では、こうした業務に携わる運転者について、その「頻繁に乗降する区間」に限りシートベルトの着用義務を免除すると定められています。
国家公安委員会規則による具体的な対象業務
国家公安委員会規則では、シートベルト着用義務の免除対象となる業務が具体的に定められています。代表的なものとして、郵便物の集配、新聞配達、クリーニング品の集配、飲料・食品などのルート配送などが挙げられます。
軽貨物のドライバーについても、道路交通法で定める集荷・配達業務に該当する場合は同様の扱いとなり、条件を満たす区間に限りシートベルトを外して運転することが認められています。
「頻繁に乗り降りする区間」はどこまで?

シートベルトの着用が免除される区間については、法律上の明確な距離基準こそありませんが、行政解釈や実務で用いられる目安が示されており、判断のポイントが一定程度整理されています。
ここでは、法令・行政解釈・実務の三つの観点から、「頻繁に乗り降りする区間」はどこまで認められるのかについて解説します。
免除が適用される区間に明確な距離規定はない
道路交通法や関連する政令・規則では、シートベルト着用義務の免除が認められる「頻繁に乗り降りする区間」について、明確な距離や回数の基準は定められていません。
あくまで業務の実態に基づき、短い区間で継続的に乗り降りを繰り返す場合に限って免除が適用されるという考え方です。そのため、配達エリアまでの移動区間や乗降が少ない区間は免除の対象外となり、通常どおりシートベルトの着用が求められます。
行政解釈が示す「頻繁な乗降」の目安
行政解釈では、「頻繁に乗り降りする区間」についての具体的な距離や回数の基準こそ設けられていないものの、実務上の参考目安が示されています。一般的には、数十メートルから60メートル程度の短い区間で継続的に乗降を繰り返す場合が「頻繁な乗降」に該当するとされています。
一方で、配達エリアまでの移動区間や乗降の少ないルートは対象外となり、シートベルトの着用が必要となるため注意が必要です。
免除が認められやすい走行区間
国家公安委員会規則の資料では、乗降の回数が非常に多く、移動距離も30〜60メートル程度に留まる業務が免除対象として想定されています。
これを軽貨物の業務に置き換えると、住宅が密集したエリアで、家々を短い距離で移動しながら次々と荷物を届けるような区間が該当すると考えられます。
【軽貨物】シートベルト着用義務の注意点

軽貨物ドライバーがシートベルト着用義務を正しく理解するためには、いくつかの注意点があります。
まず、免除規定を誤って解釈し、対象外の区間でもベルトを外してしまうと違反となるため注意が必要です。また、「免除=安全」というわけではなく、あくまで法的な特例であり、事故時の危険性は変わりません。
さらに、企業に所属するドライバーと個人事業主のドライバーでは求められるコンプライアンス基準が異なる場合もあるため、自社や委託元のルールを確認することも大切です。
シートベルト着用義務を理解しておこう
軽貨物ドライバーにとって、シートベルトの着用は安全確保と法令遵守の両面で欠かせない要素です。原則として全区間での着用が求められますが、短距離かつ頻繁な乗降が伴う一部の区間では、政令や規則に基づき免除が認められる場合があります。
ただし、免除の範囲は限定的で、解釈を間違えると違反につながるケースもあるため注意が必要です。業務内容や免除可能な走行区間を正しく理解し、自社・委託元のルールも踏まえながら、安全とコンプライアンスの両立を図りましょう。
この記事の執筆者

軽カモツネット編集部
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