業務委託ドライバ―には給与明細は発行されない
業務委託ドライバ―に支払われる金銭は給料ではなく報酬と呼ばれ、委託元の運送会社には給与明細のような形式の詳細な情報を提供する義務はありません。ただし、給与明細の代わりに支払明細書や支払調書が発行されるケースもあります。なお、正社員や非正規雇用のドライバーには給与明細が発行されます。
本記事では、業務委託ドライバ―に対して発行される支払明細書や支払調書についても、便宜上「給与明細」と表記しています。
頑張り次第で高収入を狙いやすいと言われている軽貨物ドライバーですが、思ったより稼げないという声が多いのも事実です。
軽貨物ドライバーが稼げないと感じる要因は個人によって様々。ドライバ―の配送スキルやお金の管理に問題がある場合もあれば、委託元の運送会社が経費やロイヤリティを不当に差し引いているケースも考えられます。
稼げない要因がドライバ―自身と運送会社のどちらにあるのかを判断するためには、給与明細を正しくチェックすることが欠かせません。そこで今回のコラムでは、軽貨物ドライバーの給与明細を正しく確認する方法を解説していきます。
目次
軽貨物ドライバーが稼げないと感じる要因とは
軽貨物ドライバーが稼げないと感じるのは、以下のような要因が考えられます。
- 配送効率が悪い
- 自身で負担する経費がかさんでいる
- ロイヤリティが差し引かれている
配送効率が悪い
配送ルートが適切でなく同じ道を何度も行き来している、不在票の記入に手間取っているというように、配送スピードが遅いと決められた稼働時間内に運べる荷物の個数が減ります。
成果報酬制が取り入れられている場合は特に、先述したような配送業務における無駄を減らしていくことで、報酬を増やす余地があるかもしれません。
自身で負担する経費がかさんでいる
ドライバ―自身が負担する経費がかさんでいるケースも考えられます。配送エリアの安い駐車場をあらかじめ把握して駐車場代を安く抑える、アイドリングストップを使わずガソリン代を削減するといった工夫を取り入れれば手取り額のアップが期待できるでしょう。
不当にロイヤリティが差し引かれている
業務委託ドライバーの場合、依頼元の運送会社から報酬の一部をロイヤリティとして引き抜かれる場合が多いです。
軽貨物ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、ドライバ―が給与明細をしっかり確認しないのをいいことに、支払う報酬を下げようとする業者も中には存在します。
運送会社の不正により報酬が少なくなっているケースを見抜くためには、給与明細に記載されている項目の意味を理解し、報酬が適切かどうかを確認しなければなりません。
給与明細の内訳や正しくチェックするための注意点について、この後詳しく解説していきます。
軽貨物ドライバーの給与明細の記載項目とは
運送会社と業務委託契約を結ぶ軽貨物ドライバーの給与明細(業務委託の場合支払明細書のこと、以下給与明細と表記します)には、以下のような項目が記載されていることが一般的です。
- 基本給(基本報酬額)
- 車両のレンタル料
- ロイヤリティ
- その他
基本給(基本報酬額)
軽貨物ドライバ―と業務委託契約を結ぶ運送会社は、配送した荷物の個数に応じて報酬が決まる固定報酬制を採用することが一般的です。固定報酬制の場合、荷物単価×配送件数に消費税をかけた金額が報酬額として記載されます。
なお、運送会社と業務委託契約を結んでいるドライバ―の場合、有給休暇は存在しません。従って、体調不良や忌引きなどで急遽稼働できなくなると、もともと得られるはずだった報酬はゼロになってしまいます。
業務委託ドライバ―の休みや稼働時間のルールに関しては、以下の記事でさらに詳しくまとめています。気になる方はぜひこちらもチェックしてみてください。
ロイヤリティ
個人事業主として稼働する場合、ドライバ―は運送会社にロイヤリティ(業務委託手数料)が報酬額から差し引かれます。
ロイヤリティの相場は月収の10~15%と言われていますが、実際には大きな幅があります。当初の説明と異なり、不当に高い金額となっていないかチェックが必要です。
また、ロイヤリティが著しく低い場合も要注意。一見良心的に見えますが、後々別の名目で高額な費用を請求される・ドライバ―に対する保証が不十分であるといった可能性が考えられます。
車両のレンタル料
個人で活動する軽貨物ドライバーは、配送に使用する車両を以下のような方法で用意します。
- 自身で購入する
- カーリースを利用する
- 運送会社からレンタルする
運送会社から車両を借りる場合、毎月の報酬額からレンタル料が差し引かれることが多いです。
配送車をレンタルする際にかかる費用は約30,000~40,000円が相場だと言われていますが、実際はロイヤリティと同様、運送会社によって大きく異なります。無料で貸し出してくれるところもあれば、法外なレンタル料を請求してくるところも少なくありません。
その他
- 自動車税
- 保険料
- 車検代
- バッテリー・オイル・タイヤなどの交換代
- ガソリン代
軽貨物車両を維持する際に発生する上記のような費用を委託元が負担するのかドライバ―の経費から差し引かれるのかは、運送会社によってまちまちです。
ドライバーが毎月負担しなければならない諸経費は、給与明細では保険料・車両メンテナンス費といった項目で記載される傾向にあります。
【軽貨物ドライバー】給与明細で確認すべきポイント
給与明細を確認する際には、以下のポイントに注目するべきです。
- 配送単価・ロイヤリティが契約時と一致しているか
- 不明な経費が差し引かれていないか
先述したように、軽貨物ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、報酬の内訳に関して理解が浅いドライバ―を狙い、支払う報酬を下げようとするところも少なくありません。
具体的には、配送単価やロイヤリティをドライバ―に知らせることなく契約時の金額から下げたり、用途が不明の項目を設けて経費を差し引いたりするケースが考えられます。
- 自分の携帯電話を使用して稼働しているのに「携帯使用料」が差し引かれている
- リース料金に含まれているにも関わらず「任意保険料」が別途で差し引かれている
上記のように、給与明細を念入りに確認しないと気付けない不正が働かれている可能性もあります。少しでも不審に感じる点があったら、給与明細を今一度よく見直してみると良いでしょう。
給与明細をもらえない場合は要注意
冒頭にも記載した通り、運送会社には業務委託ドライバーに対して給与明細を発行する義務はありません。そのため、そもそも給与明細をもらえないというケースも多いです。
ただし、給与明細を発行しなくても良いことを利用して、ドライバ―に知らせることなく不当にロイヤリティを差し引く悪質な運送会社も存在するため注意しなければなりません。
契約時に同意した配送単価やロイヤリティ、配送件数などを踏まえて計算が合わない、もっと報酬が高いはずだと感じる方は、一度委託元に問い合わせてみることをおすすめします。
損をしないために|給与明細は正しく確認しよう
ご紹介したように、軽貨物ドライバーが思っていたほど稼げないと感じる際には様々な要因が考えられます。悪質な運送会社によって、知らない間に高額なロイヤリティを差し引かれているケースも残念ながら多く存在します。
給与明細を正しく確認することは、軽貨物ドライバーが不当に損をしないために大切なスキルの1つです。「もっと報酬が高いはずなのに」と感じている方は、本記事を参考に一度自身の給与明細を見直してみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。