EC需要が拡大する中、物流の最終工程である「ラストワンマイル」の重要性は一段と高まっています。荷物が最終拠点を出てから顧客の手元に届くまでのこの区間は、サービスの品質や顧客満足度を大きく左右する重要なプロセスです。

本記事では、ラストワンマイルの基本的な意味から、現場が抱える課題、最新の改善策までをわかりやすく解説します。

「ラストワンマイル」とは?

近年、物流業界で「ラストワンマイル」という言葉がよく聞かれるようになりました。ここでは、ラストワンマイルの意味や重要性について分かりやすく解説します。

物流における最後の一区間

ラストワンマイルとは、荷物が最終拠点を出てから、顧客の手元へ届くまでの「最後の一区間」を指す言葉です。EC需要が高まる中、この区間は配達速度や受け取りやすさに直結し、顧客満足度を左右する重要な工程として注目されています。

もともとは通信業界で使われていた用語ですが、「利用者の手元まで届ける」という仕組みが共通していることから物流分野にも広がりました。現在では、この短い区間の質を高めることが、サービス向上に欠かせない取り組みとなっています。

ラストワンマイルの重要性

ラストワンマイルの重要性は、企業と顧客をつなぐ「最後の接点」がサービス全体の評価を左右するという点にあります。EC市場の拡大で配送量が増え、迅速さや受け取りやすさへの要求も高まっています。

特に物流の最終区間は時間指定や再配達などの個別対応が多く、コストがかかりやすい工程です。そのため、ラストワンマイルの効率化と品質向上は、企業の競争力を高める重要なポイントとして注目されています。

「ラストワンマイル」が抱える課題とは?

ラストワンマイルは、顧客に最も近い区間であるがゆえに、細かな対応や個別の作業が多い工程です。その分、少しの遅れや対応の違いがサービス全体の評価に直結し、現場の負担が大きくなりがちです。

ここでは、ラストワンマイルが抱える主な課題について詳しく見ていきましょう。

ドライバーの不足や高齢化

ドライバーの不足や高齢化は、ラストワンマイルにおける大きな課題のひとつです。EC需要の拡大で荷物が増える一方、長時間稼働や報酬の低さから若い人材の参入が進まず、既存のドライバーに負担が集中する状況が続いています。

さらに、車両や倉庫のキャパシティが追いつかないケースもあり、現場の稼働環境は厳しさを増しつつあります。こうした事態が続けば、将来的に安定した配送体制を維持することが難しくなるため、業界全体での改善が求められています。

稼働量の増加

労働量の増加も、ラストワンマイルにおける重要な課題です。予定通りに配達しても、受取人の不在による再配達が続くと、ドライバーの負担は膨らんでしまいます。

さらに近年は、「送料無料」や「当日配送」などの便利なサービスが広がり、EC利用者が増えたことで荷物量そのものが大幅に増加しました。しかし、人員や車両、仕分け体制といった現場のリソースは急に増やせないため、物量の伸びに対応しきれないケースも見られます。

その結果、再配達による時間のロスやコストの増大が重なり、配送効率の低下につながっているのです。

利益率の低下

業務への負荷が増える中で、運送会社の収益にも大きな影響が出ています。ラストワンマイルの利益率が下がっているのは、サービス競争の激化と現場での負担増が同時に進んでいるためです。送料無料や即日配送が一般化したことでEC事業者の負担する送料が増え、そのしわ寄せで運送会社に支払われる委託費が抑えられる傾向があります。

さらに、ドライバー不足による人件費の上昇や、再配達に伴う追加コストも利益を圧迫します。加えて、都市部では渋滞や駐停車の難しさ、地方では配達効率の低さなど地域特有の課題が重なり、採算が合わない状況が続いています。

「ラストワンマイル」の抱える課題を解決するには?

ラストワンマイルの課題を解決するためには、ドライバーの増員や現場の努力だけではなく、仕組みそのものを見直す視点が求められます。

こうした背景から、現在は多くの企業が次のような取り組みを進めています。

ITツールの活用で入出庫管理や配送業務を効率化

ITツールの活用は、入出庫や配達準備にかかる手間を減らし、ラストワンマイル全体の作業を効率化することにつながります。これまで多くの現場では仕分けや記録を手作業で行っていたため、作業の負担が大きく、ミスも起こりやすいという問題がありました。

一方、現在は入出庫状況を自動で管理できるツールが増え、スタッフの負担を軽減しながら作業ミスを防ぎ、業務をスムーズに進められる体制が整いつつあります。

拠点の集約と共同配送の導入で負担を軽減

ITによる業務改善に加えて、物流拠点そのものを見直すことも、ラストワンマイルの効率化には欠かせません。

拠点が多いと倉庫の維持費が増えるだけでなく、配達ルートが複雑になり、ドライバーの負担も重くなります。拠点を集約することで作業が1ヶ所にまとまり、無駄な移動や重複作業を減らすことが可能です。

さらに、複数の企業が荷物をまとめて運ぶ共同配送を導入すれば、必要な車両やスタッフが抑えられ、人手不足や物流コストの改善にもつながります。

配送管理システムで配車計画やルートを最適化

配送管理システムを取り入れることも、ラストワンマイルの最適化に有効な手段です。配車計画やルート選定をデジタルで管理できるため、トラックの稼働状況や走行ルート、燃料消費などをまとめて把握することができます。

従来は紙の記録や担当者の経験に頼っていた配車管理をシステム化することで、無駄の少ない運行計画を立てやすくなり、配送コストを抑えながら効率的な運用を実現できる点が大きなメリットといえるでしょう。

顧客側の行動を変える仕組みづくり

ラストワンマイルの抱える課題を解決するためには、物流側の努力だけでなく、顧客の受け取り方に働きかける仕組みづくりも欠かせません。不在による再配達が続くと、ドライバーの稼働量やコストが膨らむため、利用者が柔軟に荷物を受け取れる環境を整えることが重要です。

具体的には、置き配や宅配ボックス・ロッカー受取の普及、配達時間の事前通知、受け取り変更のしやすさといった工夫が挙げられます。こうした仕組みを整えることで再配達を減らし、配送全体の効率向上につなげることができます。

ラストワンマイルの重要性と今後の展望を理解しよう

ラストワンマイルは物流の最後の工程であり、顧客満足度を大きく左右する重要なポイントです。しかし現場では、ドライバー不足や再配達の増加など、さまざまな課題が顕在化しています。

こうした問題を解決するには、ITツールによる作業の効率化、拠点集約による無駄の削減、共同配送や配車計画の最適化といった取り組みが欠かせません。さらに、受け取り方法の選択肢を増やし、再配達を減らす工夫も重要です。

企業と利用者の双方が工夫を重ねることで、物流全体の質が高まり、より持続可能な配送モデルへと近づくことができます。

この記事の執筆者

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軽カモツネット編集部

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