EC事業の拡大に伴い年々需要が高まっている軽貨物ドライバー。自動車免許を取得して配送車を確保するだけで始めることができ、独立開業のハードルが低い点でも注目を集めています。

独立しやすい職種とはいえ、事業を始めたはいいもののうまく軌道に乗らず、失敗してしまう方が多いのも事実です。

そこで今回のコラムでは、軽貨物ドライバーが独立に失敗してしまう要因を詳しく解説していきます。売上をアップして独立開業を成功させるためのコツも紹介しますので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

軽貨物運送業は独立開業しやすい

軽貨物ドライバーというと、かつては正社員やアルバイトとして活躍する方がほとんどでしたが、近年は独立開業して個人で活動する方も増えてきています。

自動車免許と配送車を確保できればすぐにでも事業を始めることができ、必要な初期投資は非常に少ないです。事業に失敗した際の金銭的なダメージも限定的であるため、軽貨物運送業は独立開業しやすい業種の1つだと言われています。

軽貨物ドライバーの将来性

EC事業の急速な発展や配送サービスの多様化などを背景に、軽貨物ドライバーの需要は年々拡大しています。比較的軽量の荷物を個人宅に配達でき、置き配や日時指定といった細かなニーズに柔軟に対応できる軽貨物ドライバーは、今後もますます重宝されていくと考えられるでしょう。

従って、軽貨物ドライバーは将来性の高い職種だと言えます。軽貨物ドライバーの現状や今後の展望については、下記の記事でさらに詳しく解説していますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

軽貨物ドライバーの平均年収はどれくらい?

個人事業主として稼働する軽貨物ドライバーの平均月収は約20~40万円程度、年収で言うと240~480万円前後だと言われています。

ただし、成果報酬制の元で働くことが一般的であり、荷物を多く配達するほど報酬がアップしていく実際は稼働スケジュールや請ける案件によって大きく変わってきます。配送スキルが高く、フルタイムで稼働しているドライバーの中には年収1,000万円を実現させている方もいるようです。

軽貨物ドライバーが独立・開業する流れ

軽貨物ドライバーが独立開業する際の流れは以下の通りです。

  • 軽貨物車・駐車場を確保する
  • 運輸支局に届け出る
  • 黒ナンバーを取得する
  • 保険に加入する
  • 開業届を提出する

開業届は開業予定日から1ヶ月以内に管轄の税務署に提出しなければなりません。開業届は国税庁のホームページで入手可能です。

事業を始める地域を管轄する運輸支局には、以下の書類を提出する必要があります。

  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書
  • 運賃料金設定届出書
  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証のコピー

また、確定申告での節税効果を高めるため、開業から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出しておくと良いです。

軽貨物ドライバーが独立、開業する際の手順や必要な費用については、下記の記事で詳しくまとめています。興味のある方は、ぜひ合わせてご覧ください。

軽貨物ドライバーが独立に失敗する9つの原因

軽貨物ドライバーが独立に失敗してしまう要因として、主に以下の9つが挙げられます。

Point

・十分な資金を準備しないまま事業を始めてしまう
・運送会社に所属せず活動してしまう
・保険への加入に不備がある
・案件の獲得方法を1つに絞ってしまう
・契約内容を十分に確認しない
・売上と経費のバランスが取れない
・配送スキルが上がらない
・体力的についていけない
・契約を解除されてしまう

十分な資金を準備しないまま事業を始めてしまう

軽貨物ドライバーの魅力の1つとして、開業資金を抑えられる点が挙げられます。確かに飲食店や美容サロンといった数百万円以上の資金が必要になる事業に比べると発生する費用は少ないです。しかし、配送車として使える車両を所有しているかどうかによって、開業コストはかなり変わってきます

事業用の車両を既に保有している場合は、黒ナンバーの取得手続きで発生する費用を始めとした5万円程度のコストで開業することができます。一方、新車を購入して配送車として活用する場合は、100万円以上の資金を確保しておかなければなりません。

「あまりお金をかけずに開業できる」という情報を鵜呑みにしてしまうと、資金が不足してそもそも事業を始められないなんてことも考えられるでしょう。

運送会社に所属せず活動してしまう

未経験で軽貨物ドライバーとして独立開業しようとする方に多いのが、運送会社に所属せず自力で案件を獲得しようとするケースです。しかし、何の実績もない個人のドライバーが飛び込み営業をしても、仕事を依頼してもらうことは難しいでしょう。

軽貨物ドライバーには、決められた荷物を時間通りに届けるという役割を当たり前のように遂行することが求められます。案件を獲得するためには、依頼主からの信頼を得て「このドライバ―なら安心して任せられる」と思ってもらうことが欠かせません

開業したばかりで実績や人脈がない未経験のドライバーにとって、いきなり自力で案件を獲得することは困難です。まずは、運送会社に所属したりフランチャイズに加盟したりして経験を積みながら、安定した報酬を得て事業の土台を作ることをおすすめします。

保険への加入に不備がある

交通事故のリスクと隣り合わせの軽貨物ドライバーには、全てのドライバ―に加入が義務付けられている自賠責保険の他、任意保険にも加入することが推奨されています。

保険料を抑えたいからといって、任意保険に加入しなかったり、あるいは補償範囲が狭い保険会社を選んだりするのは避けるべきです。万が一事故に巻き込まれてしまった際に高額な賠償金を支払わなければならず、生活できないといった事態に発展しかねません。

案件の獲得方法を1つに絞ってしまう

  • 運送会社に所属する
  • 軽貨物マッチングアプリを利用する
  • フランチャイズに仕事を紹介してもらう

個人の軽貨物ドライバ―が案件を請ける方法は、主に上記の3つです。マッチングアプリは仲介手数料が低く報酬が比較的高い、フランチャイズはブランド力を生かして信頼度を上げやすいなど、それぞれ異なる長所があります。

ライフスタイルや目標収入に応じて自分に合った方法を見つけるのがベストですが、独立当初から案件の獲得方法を1つに絞るのは避けてください

契約を結ぶ運送会社や利用するマッチングアプリによっては、案件数が少なかったり、ドライバ―同士の競争率が高かったりと思うように案件を獲得できないこともあるためです。

安定した収入を得るためには、複数の運送会社やマッチングアプリを組み合わせて案件数を確保することが欠かせません。

契約内容を十分に確認しない

契約内容をよく確認せずに運送会社やフランチャイズと契約を結んでしまうと、以下のようなトラブルに巻き込まれる可能性があります。

  • 想定以上の長時間稼働を強いられる
  • 契約を解除する際に高額な違約金を請求される
  • 状態が悪く故障しそうな配送車をリースで貸し出される

思わぬ高額な出費や体力的な負担を余儀なくされ、個人事業主ドライバ―としての活動を断念してしまう方も少なくないようです。

運送会社の中には、契約書の目立たない箇所に重要事項を記載し、ドライバ―にとって不利な条件で無理やり契約を結ばせようとしてくるところも存在するため要注意です。自分の身を守るためにも、契約書の内容を熟読し、不明点を全て解消した上で契約するようにしてください

売上と経費のバランスが取れない

軽貨物ドライバーが独立開業する際には、稼働する際にかかる以下のような経費を全て自身で負担しなければなりません。

  • 自動車保険料
  • 自動車税
  • ガソリン代
  • 駐車場代
  • 車検代

フルタイムで稼働する軽貨物ドライバーの場合、毎月約5万円の費用負担が発生すると言われています。経費が必要以上にかさんでしまうと、頑張っているのに思うように稼げないと感じ、事業がなかなか軌道に乗らないこともあるでしょう。

売上と経費のバランスを安定させられるよう、毎月の収支をしっかりと管理し、経費を節約したり案件数を調整したりするべきです。

配送スキルが上がらない

個人事業主の軽貨物ドライバーは、配送した荷物の個数に応じて報酬が支払われる成果報酬制の元で稼働することが一般的です。頑張れば頑張るほど売上が上がっていくというのが成果報酬制の魅力ですが、配送スキルを上げられなければ配送できる荷物の個数が増えず、思うように収入をアップさせることができません

専用のアプリを活用して最適な配送ルートを見つける、積み下ろす際に手間取らないよう荷物の積み方を検討するなど、自分なりに工夫を重ねていくことが必須だと言えます。

体力的についていけない

軽貨物ドライバーは年齢や性別に関わらず誰でも始めやすい職種だと言われています。とはいえ、荷物の積み下ろしや長時間の運転といった肉体労働が中心であり、体力的な負担は決して小さくありません

案件によっては、以下のような理由から業務を継続することが難しくなってしまうケースも考えられます。

  • 配送する荷物が多すぎて配りきれない
  • 1日の稼働時間が長すぎる
  • 配送する荷物が重く足腰に過剰な負荷がかかる

自身の体力や稼働できる時間帯を踏まえて業務内容や稼働時間を十分に吟味し、自分に合っている案件を選択することも、軽貨物ドライバーとして長く活躍する上で非常に大切です。

契約を解除されてしまう

正社員やアルバイトのドライバ―が企業と雇用契約を結ぶのに対し、独立開業したドライバ―は企業と直接契約を結びます。

  • 誤配・未配・遅配
  • 無断欠勤
  • 荷物の紛失

案件をこなす中で上記のような不備があると、案件を割り振ってもらいづらくなります。ペナルティを課されたり契約を解除されたりしてしまうこともあるでしょう。

案件を任せてもらい安定した売上を獲得するためには、契約を結ぶ運送会社やフランチャイズからの信頼を得続けなければなりません。始めのうちは身の丈にあった案件を請け、慣れてきたら難易度の高い高単価の案件に挑戦するといった工夫が求められます。

軽貨物ドライバーが独立開業を成功させるポイント

個人の軽貨物ドライバーが事業を成功させるためには、以下4つのポイントが重要となります。

  • 収支計画を立ててから開業する
  • 契約する運送会社について入念にリサーチする
  • 売上と経費を綿密に管理する
  • すぐに諦めない
  • スキル・実績を積んでお客様・委託元との信頼関係を築く

収支計画を立ててから開業する

先述した通り、軽貨物ドライバーとして独立開業する際に必要な費用は配送車を所有しているかどうかによって大きく変わってきます。開業してからもガソリン代や自動車保険料といった、決して小さくない経費負担が発生します。

未経験のドライバーは特に、独立開業したばかりの頃は十分な案件数を確保することが難しいと予想されるため、思うように収入を伸ばせない可能性が高いです。収支計画をしっかりと立て、ある程度余裕を持って資金を確保した上で独立することをおすすめします。

契約する運送会社について入念にリサーチする

軽貨物ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、ドライバーにとって不利な条件での稼働を強いる悪質なところも存在します。こうした委託元と契約してしまうと、高額な違約金やロイヤリティの支払いを余儀なくされる、辞めたいのに辞めさせてもらえないといったトラブルに巻き込まれかねません。

応募者を集めるため、求人サイトにドライバーにとって都合の良い情報しか記載していない委託元も散見されます。運送会社のホームページやSNS、口コミなどを調査し、信頼性の高さを確かめた上で契約を結ぶようにしましょう。契約書を隅々まで読み込み、内容を全て理解した上で契約を交わすのも重要なポイントです。

売上と経費を綿密に管理する

フルタイムで稼働する軽貨物ドライバーの場合、毎月発生する経費負担は約5~10万円だと言われています。苦労して得た売上が手元に残らないといった状況に陥らないよう、売上と経費のバランスをしっかりと管理しましょう。

収支の正確な管理は、経費を漏れなく計上して確定申告における節税効果を高めることにも繋がります。

すぐに諦めない

ドライバー業に従事した経験がない方は特に、独立してすぐに事業が軌道に乗ることは考えにくいです。業務に慣れるまでは配送スピードが上がらず報酬が思うように増えないケースが一般的であるだけでなく、いきなり効率良く稼げる案件を見極められるようになるのは難しいでしょう。

なかなか稼げないと感じても、すぐに諦めず経験を積んでいけばスムーズに配送できるようになり、売上が伸びていく可能性も期待できます。

スキル・実績を積んでお客様・委託元との信頼関係を築く

個人で活動する軽貨物ドライバーが案件を獲得するためには、他のドライバーとの競争に勝たなければならないケースも少なくありません。多くのドライバーの中から委託元や配送先のお客様に選んでもらうためには、信頼関係を築くことが大切です。

  • 最適な道順で配送する
  • 不在票を素早く記入する
  • 宅配ボックスをスムーズに使いこなす

上記のような配送スキルを磨く努力を欠かさず、正確に業務を遂行した実績を積んでいけば、「このドライバ―なら安心して任せられる」と思ってもらえます。高単価の案件を割り振られる確率が上がり、売上が安定しやすくなるでしょう。

複数の案件を組み合わせて効率良く稼ごう

独立開業した軽貨物ドライバーが事業を軌道に乗せるために重要なポイントについて解説してきました。失敗を防ぐためには、自分の配送スキルやライフスタイル、体力などに合わせて運送会社や案件を選択することが肝心です。

ただし、未経験の方は実績が乏しいうちから案件を必要以上に吟味するのはおすすめできません。始めは積極的に案件を請けて実績を積み、収入の基盤を築くことが、軽貨物ドライバ―として成功する1番の近道だと言えます。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。