昨今、運送業界は人手不足やコスト上昇などさまざまな課題を抱えています。そのため、「運送業は将来なくなるのでは」と言われることも少なくありません。一方、最新のテクノロジーを活用することで「人」と「技術」が共存する新たな可能性も広がっています。
本記事では、運送業が抱える現状の問題点や今後の展望を分かりやすく解説します。
Point
この記事でわかること
・「運送業は将来なくなる」と言われる主な理由
・自動運転・ドローン・AIなどの技術革新が運送業にもたらす変化
・運送業が今後も必要とされる理由
・配送ドライバーに求められる役割の変化
なぜ「運送業は将来なくなる」と言われるのか?

最近、「運送業はこのままでは将来なくなるのではないか」という声を耳にする機会が増えています。ここでは、「運送業は将来なくなる」と言われる主な理由について詳しく解説します。
深刻化するドライバー不足と「2024年問題」の影響
近年、運送業では人手不足が慢性化し、若年層の参入減少やドライバーの高齢化が進んでいます。さらに、時間外稼働の上限が厳格化されたり、「2024年問題」によって従来の働き方が大きく制約されたりして、輸送力の確保がこれまで以上に難しくなっています。
こうした要因が重なることで、従来の体制では物流網を安定的に維持することが難しいという懸念が強まりつつあります。
燃料費高騰と収益性低下が招く経営リスク
燃料費の高騰も、運送業の経営を圧迫する大きな要因のひとつです。運送コストが上昇する一方で、中小規模の事業者はその負担を運賃に反映させにくく、収益が安定しにくい状況が続いています。
燃料価格の変動分を追加料金として運賃に上乗せする「燃料サーチャージ」の導入も進みつつありますが、改善には時間を要するでしょう。こうした収益性の低下は企業の経営基盤を揺るがし、事業が継続できなくなるリスクを高める結果につながっています。
ECの利用増加と再配達がもたらす現場負担の拡大
EC需要の拡大により物流量は増え続けており、現場の負担はかつてない水準に達しています。小口配送が主流となる中、時間指定や即日対応といったニーズが増え、再配達も多発。こうした業務量の増大に対してドライバーの確保は追いつかず、作業効率の低下は避けられない状況です。
採算の取りにくい構造が続くことで現場の疲弊は深刻化し、従来の体制では安定したサービス提供を維持することが難しいという不安が大きくなっています。
運送業の将来はどう変わるのか?

技術革新の加速により、運送業の現場はこれまでにないスピードで変化し始めています。とくに自動運転やドローン技術、AIを活用した管理システムなど、従来の業務の在り方を根本から見直す動きが広がっています。
ここでは、運送業の将来がどう変わるのかについて、主な可能性を見ていきましょう。
自動運転技術の進化
自動運転技術は急速に進化しており、長距離輸送を中心に自動化が現実味を帯びてきています。すでに複数の企業が実証走行を進めており、実用化が進めばドライバーの負担軽減や長時間運行の実現など物流効率の向上が期待されます。
一方、法整備や安全面の課題は依然として残っており、完全無人化の実現には時間を要するでしょう。今後段階的な自動化が進む中で、ドライバーの役割は「運転する人」から「運行を管理する人」へと変化していくとも考えられています。
ドローンやロボットが変える「ラストワンマイル」
ドローンや配達ロボットの技術革新も進み、荷物を届ける方法そのものが変わり始めています。すでに山間部や離島ではドローンを使った配送が試験的に行われ、これまで人が運んでいた小さな荷物をドローンが届けるケースも増えています。
都市部でもロボットが自動走行で荷物を届ける実験が進み、実用化が近い段階に入っています。今後、法整備が進めば、荷物を利用者の元へ届ける最後の区間「ラストワンマイル」の一部が自動化され、これまで人が担ってきた配達業務の形が大きく変わる可能性があります。
AI・IoTによる配送の最適化
AIやIoTの活用により、物流の管理方法も大きく変わり始めています。AIを使えば、過去のデータとリアルタイムの情報を組み合わせて最適な配送ルートを計算し、交通状況や天候の変化にも対応しながら経路を自動調整できます。
さらに、IoTと連携することで在庫や車両、荷物の状態を一元的に把握でき、ムダな走行や待機時間を減らすことが可能になります。
近年は大手企業だけでなく中小企業でも導入が進んでおり、最新のデジタル技術をどれだけ活用できるかが、今後の競争力を左右する重要なポイントだといえるでしょう。
それでも運送業がすぐにはなくならない3つの理由

新しい技術が次々と登場する一方で、物流の現場には「人の役割」が欠かせない領域も残っています。
こでは、運送業がすぐにはなくならない3つの理由を詳しく解説します。
技術・法律・インフラの不整備
自動運転やロボット配送などの技術は進化しているものの、今のところ、実際の運用は限られた環境にとどまっています。悪天候や交通量の多い地域での走行、予期せぬ事態への対応など、技術面の課題が多く残されているためです。
さらに、事故の責任をどう扱うか、保険制度をどう変えるかといった法律面の整備も追いついていません。必要インフラの構築も含め、これらの問題が解決されるには時間を要するため、運送業が完全に自動化される状況には至っていないというのが現状です。
人にしかできない仕事がある
技術面や制度面の課題が残っていることに加えて、配達の現場には「人でなければ対応しにくい仕事」も少なくありません。受取人が不在だったときの判断や、細かな依頼への調整など、その場の状況を見て動く柔軟さは「人ならではの力」です。
また、高齢者が多い地域では、顔なじみの配達員がいることが利用者の安心につながっているという面もあります。「人が介在する価値」がある限り、配達業務がすぐに自動化される可能性は高くないと考えられています。
「社会インフラ」としての物流は簡単に止められない
地方や過疎地、離島などでは、都市部のように効率的な配送網を築くことが難しく、地元の道や住民の事情を理解した人の対応が欠かせません。生活用品の供給を運送サービスに頼る住民も多く、物流そのものが地域の暮らしを支える「社会インフラ」として機能しています。
このように、人の手で支える必要がある地域が多く残っていることから、運送業がすぐに別の手段へ置き換わる可能性は高くないとされています。
運送業の形は変化し続ける
運送業は、人手不足やコストの上昇、ニーズの多様化といった課題を抱えているものの、人々の暮らしを支える基盤として今後も欠かせない存在です。
自動運転やドローン、AIなどの技術が進むにつれ、業務の一部は変化していくことが予想されますが、すべての作業が自動化されるわけではありません。
人と技術が互いの強みを補い合うことで、安全性と持続性を両立した新しい物流の形が広がっていくと考えられています。
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軽カモツネット編集部
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