個人事業主の軽貨物ドライバーが事業に利用する車両は、適切に経費計上することで税金対策に繋げることができます。ただし、車両の購入費用をその年に全額経費として計上することは原則できず、減価償却により数年に分けて費用化しなければなりません。
本記事では、耐用年数の考え方や計算式といった軽貨物車両の減価償却に関する基本的な知識をわかりやすく解説します。フリーランスのドライバーが知っておくべき、節税効果を高めるための注意点もまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
軽貨物車両に関わる費用は経費計上できる

個人事業主の軽貨物ドライバーが事業で利用する車両は、購入費用だけでなく、維持費も経費として計上することが可能です。具体的な項目としては、以下が挙げられます。
- ガソリン代
- 駐車場代
- 自動車税・重量税
- 自賠責保険料・任意保険料
- 車検費用
- 修理代
- ETC料金
ただし、軽貨物車両を仕事とプライベートの両方で使用する場合、購入費用や維持費の全額を経費にすることはできません。事業で使用した割合に応じて家事按分を行う必要があります。
軽貨物車両の家事按分を行う際には、走行距離や使用日数を基準にするのが一般的です。税務調査で説明を求められる可能性があるため、家事按分を行う場合は走行記録や使用日数といった根拠となるデータをきちんと保存しておきましょう。
以下に、按分比率を求める際の代表的な計算例をご紹介します。
走行距離の割合で按分するケース
年間総走行距離が1,000kmで、そのうち700kmが業務利用だった場合、経費計上できる費用の割合は「700(km)÷1,000(km)×100=70(%)」となります。
使用日数の割合で按分するケース
年間250日車を利用し、そのうち200日が業務利用だった場合、按分比率の計算式は「200(日)÷250(日)×100=80(%)」となり、車関連の出費の80%を経費計上できます。
軽貨物車を経費にする際に知っておくべき注意点

軽貨物車の経費計上を適切に行う際の注意点として、以下の3点が挙げられます。
- 本人または生計を同一にする親族の名義でなければならない
- 事業使用の証明が求められる
- 複数台を計上する際は使用実態を記録しておく
経費として認められるためには、出費が「業務に関連するもの」であることの証明が必須です。特に、家事按分を行う場合は、走行距離や使用日数を記録した帳簿やデータなどを保存し、客観的に説明できるようにしておかなければなりません。
経費計上する軽貨物車両の台数には、明確な上限はありません。しかし、個人事業主が事業用として複数台(特に3台以上)の車を所有するケースは稀であり、税務署から不審に思われる可能性があります。
全ての車が業務で使用されていることを客観的に証明できるように、業務日報といった使用実態の記録をしっかりと準備しておくことが重要です。事業規模や収益に見合わない台数の車両を経費計上していると、税務調査の対象となるリスクが高まります。
軽貨物車両の減価償却の考え方
減価償却とは、何年も使用する高額な固定資産について、使用できる期間(耐用年数)の間で購入代金を分割して経費計上していく方法です。
個人事業主の軽貨物ドライバーが業務で使用する車両も、「高額な固定資産」とみなされます。購入した年に全額を経費計上することは原則できず、減価償却の対象となります。
減価償却の対象となるのは、その資産を取得するためにかかった金額である「取得価額」です。軽貨物車の場合、以下の費用が含まれます。
- 車両の本体価格
- 車両付属品(カーナビ・ETC車載器・アルミホイールなど)
- 納車費用
一方で、自動車税や自動車重量税、各種保険料などは取得価額には含まれず、それぞれ別途経費として計上します。
耐用年数と減価償却費の計算式

減価償却を行うには、まず軽貨物車の法定耐用年数を把握する必要があります。法定耐用年数とは、固定資産に対して法律で定められた使用期間のことです。
国税庁の定める耐用年数表によると、新車の軽自動車(総排気量0.66L以下のもの)の法定耐用年数は4年とされています。
中古の軽貨物車両を購入した場合、中古車は新車よりも既に消耗しているという考え方に基づき、耐用年数が短く設定されます。より短期間で減価償却を進めることができ、節税効果を実感しやすいのはメリットだと言えるでしょう。
中古の軽貨物車両の耐用年数は、新車登録からの経過年数を踏まえて以下のように算出されます。
新車登録から4年未満の車両を購入する場合
「残りの耐用年数+(経過年数×0.2)」という計算式で算出します。新車登録から1年経過した中古の軽貨物車両を購入する場合、残りの耐用年数は3年であるため、「3(年)+(1(年)×0.2)=3.2(年)」となります。
1年未満の端数は切り捨てるため、このケースでの耐用年数は3年です。
新車登録から4年以上経過した車を購入した場合
既に法定耐用年数を経過した中古資産の耐用年数は、「法定耐用年数×0.2」で計算できますが、計算結果が2年未満になる場合は2年とみなされます。
軽貨物車両での計算結果は「4(年)×0.2=0.8(年)」。つまり、法定耐用年数を過ぎた軽貨物車両の耐用年数は一律で2年ということになります。
軽貨物車両の減価償却は定額法で計算する
減価償却の計算方法には定額法と定率法の2種類がありますが、本章では、個人事業主が原則使用する定額法について詳しく紹介します。
定額法は、資産の購入費用を法定耐用年数で割った同じ金額を減価償却費として1年ごとに計上する方法です。計算が比較的簡単で、毎年の経費額が一定のため、資金計画を立てやすいというメリットがあります。
定額法では、「減価償却費=取得原価×定額法の償却率」という計算式が適用されます。償却率は耐用年数ごとに定められており、法定耐用年数が4年である新車の軽貨物車両の場合、償却率は0.250です。
なお、初年度の経費計上額は、購入した月から決算期末までの期間で月割り計算される点には注意が必要です。例えば、12月決算の個人事業主が7月に車を購入した場合、その年は半年分しか経費計上できません。
【ケース別】軽貨物車両の減価償却に関する注意点

軽貨物車の減価償却を行う際の注意点について、ケース別に紹介していきます。
購入した軽貨物車の取得価額が30万円未満だった場合
取得価額が30万円未満の場合、「少額減価償却資産の特例」が適用され、購入した年に全額を一括で経費計上することができます。ただし、特例を利用するためには、以下を始めとした複数の条件を満たしていなければなりません。
- 青色確定申告の申請書を提出していること
- 年間の取得価額の合計額が300万円以内であること
2025年6月時点で、少額減価償却資産の特例の適用期間は2026年3月31日までとされていますが、今後も延長される可能性があります。
なお、取得価額が10万円未満の場合は、この特例を使わずとも一括で経費にできます。
軽貨物車両をローン購入した場合
ローン購入した場合に毎月支払う利息は、そのまま経費として計上できます。ただし、車両本体価格にあたる月々の返済額の元本部分を再度経費計上してしまうと、二重計上になるため注意が必要です。
軽貨物車両をリースで利用している場合
毎月のリース料を全額経費として計上することができます。勘定科目としては「支払手数料」が用いられることが多いです。
車両はリース会社の所有物であるため、利用者側での減価償却は基本的には不要です。ただ、リース契約の種類によっては減価償却の対象となるケースもあるため、事前に契約内容を確認しておくことをおすすめします。
判断に迷ったら専門家への相談も検討しよう
ここまで、個人事業主の軽貨物ドライバーが車両を経費計上する際の減価償却や家事按分といった考え方について解説してきました。ただし、実際の処理には細かいルールや例外も多く、やや複雑に感じられる方も多いでしょう。
税務に関する知識に自信がないドライバーは特に、無理に自己判断せず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な経理処理を行うことで、不要なトラブルや税務リスクを避け、安心して本業に集中することができます。
減価償却のルールを押さえて税金対策を万全に
お伝えしたように、個人事業主の軽貨物ドライバーが車両を経費計上する際には、事業利用の実態を客観的に証明した上で、減価償却や家事按分を行うことが求められます。この記事を参考にしながら、正しいルールに基づいて経費を計上しましょう。
経費を漏れなく計上することは、税務上のトラブルを避けるだけでなく、税負担の軽減にも繋がり、より効率的に収益を上げるための重要なステップとなります。不安な点がある方は、税理士などの専門家に相談することも積極的に検討してみてください。
この記事の執筆者

軽カモツネット編集部
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