近年、自由な働き方や開業のしやすさから、軽貨物の個人事業主として独立を目指す人が増えています。一方、収入の不安定さや長時間労働、自己責任によるリスクなど、さまざまな課題も存在します。

本記事では、軽貨物の個人事業主として働くうえでのデメリットやリスク、それらを回避するための対策を詳しく解説します。

軽貨物の個人事業主とは?

軽貨物の個人事業主とは、軽トラックや軽バンなどの軽貨物車両を使って、荷物を運ぶ事業を個人で営むドライバーのことです。多くは運送会社や企業と業務委託契約を結び、宅配便や企業向けの配送業務を請け負う形で働きます。

普通自動車免許と車両があれば誰でも始められるため、開業のハードルが比較的低いのが特徴。法人を設立せずに個人で運営するスタイルであり自由度が高い反面、すべての業務を自己責任で行う必要があります。

軽貨物の個人事業主になるデメリット

個人事業主として稼働する軽貨物ドライバーのメリットとしては、自分のペースで働ける自由度の高さや、努力次第で収入を増やせる点が挙げられます。しかしその一方で、個人事業主ならではの負担やリスクも存在します。

ここでは、軽貨物の個人事業主として働くうえで知っておきたいデメリットについて詳しく紹介します。

収入が安定しにくい

個人事業主として働くうえでのデメリットの一つに、収入の不安定さがあります。多くの案件は成果報酬制で、配達件数や走行距離によって収入が決まるため、月ごとの金額にばらつきが生じやすいのが現実です。

特に、依頼が少なくなる閑散期や、悪天候・交通事情の影響で配達件数が減ると、そのまま収入の減少につながってしまいます。自身の稼働時間によっても得られる金額が変動するため、安定した生活を送るには計画的な働き方が求められます。

経費や税金の手続きを自分で行う必要がある

個人事業主の軽貨物ドライバーとして働く場合、経費や税金に関するあらゆる手続きを自分で行う必要があります。開業届の提出や確定申告、経費の管理、税金の納付はもちろん、社会保険や年金、各種契約の手続きもすべて自分で管理しなければなりません。

特に未経験の人にとっては、会計ソフトの扱いや帳簿の記帳など慣れない作業も多く、時間的にも精神的にも大きな負担となることがあります。

自分で仕事を確保しなければならない

個人で稼働する軽貨物ドライバーは、会社員のように仕事が自動的に与えられるわけではなく、自分で案件を探して確保しなければなりません。安定した働き方を続けるためには、配送マッチングサービスの活用や取引先の開拓など、継続的な営業活動が求められます。

仕事が思うように入らないと収入や生活にも影響が出てしまうため、営業力に加えて計画性やスケジュール管理も重要になります。

稼働時間が長くなりやすい

稼働時間が長くなりやすいことも、個人事業主の軽貨物ドライバーにとってのデメリットといえます。時間指定や再配達への対応、長距離移動などにより、1日の拘束時間が長引くことも少なくありません。すべてを自分で管理する働き方だからこそ、効率よく業務を進める力が求められるのです。

事故やトラブルの対応も自己責任になる

個人事業主の軽貨物ドライバーは、業務中に事故やトラブルが発生した場合も、すべて自分で対応しなければなりません。

修理費用や賠償金、荷物の破損・紛失による補償、配送遅延への対応など、責任はすべて個人にのしかかります。会社員のように企業のサポートを受けられない点は、個人事業主として働くデメリットといえるでしょう。

軽貨物の個人事業主にともなうリスクとは?

軽貨物の個人事業主には、契約や補償の面でいくつかのリスクが伴います。

ここでは、軽貨物の仕事を始める前に知っておきたい主なリスクについて解説します。

契約を解除される可能性がある

軽貨物の個人事業主は、業務委託先の都合によって突然契約を打ち切られることがあります。解除の理由は企業の経営不振や外注方針の変更、他のドライバーとの競合などさまざまです。

たとえ大手企業との契約であっても、一方的に解除されるケースは珍しくありません。契約が終了すれば収入は途絶え、生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。

こうした事態に備えるためにも、急な契約解除はあらかじめ把握しておきたいリスクの一つです。

悪質な業者との契約

業務委託先の中には、悪質な業者が存在する場合もあります。こうした相手と契約してしまうと、報酬の未払いや高額なリース契約、過剰な手数料などのトラブルに巻き込まれるおそれがあります。

個人事業主は労働基準法の適用対象外となるため、違約金の請求や一方的な契約条件に悩まされるケースも少なくありません。契約を結ぶ前には内容をしっかり確認し、不安な点があれば専門家に相談することが大切です。

労災の補償を受けにくい

軽貨物の個人事業主は、業務中に事故やケガが発生しても、原則として労災の補償を受けることができません。労災保険は労働者を対象とした制度であり、個人事業主は適用外とされるためです。

ただし、「一人親方」として特別加入制度を利用すれば、補償を受けられる場合もあります。リスクを軽減するためには、任意保険や特別加入を検討し、万が一の事態にあらかじめ備えておくことが重要です。

個人事業主の軽貨物ドライバーがリスクを避けるには?

個人事業主として安定して働き続けるため、軽貨物ドライバーには突発的なトラブルや環境の変化に備える意識も欠かせません。

ここでは、リスクを避けるために取っておきたい主な対策についてご紹介します。

仕事を得るためのルートを複数確保しておく

個人事業主の軽貨物ドライバーが安定した収入を維持するには、仕事を得るルートを一つに絞らず、複数に分散させておくことが重要です。特定の企業に依存していると、契約が終了する、案件数が減少するといった際に収入が大きく落ち込む恐れがあります。

複数の取引先を確保するだけでなく、繁忙期が異なる業種を組み合わせたり、空き時間を活用できる案件を取り入れたりすることで、効率的で安定した働き方を実現しやすくなります。

任意保険や補償制度への加入を検討する

軽貨物ドライバーは、業務中の事故や荷物の破損など、さまざまなリスクと隣り合わせの仕事です。自賠責保険だけでは補償が不十分なケースもあるため、任意保険や貨物保険への加入が推奨されます。

労災保険の特別加入制度を利用すれば、業務中のケガや体調不良にも備えられるでしょう。安心して働くためにも、保険や補償制度を上手に活用することが大切です。

確定申告や経理の負担を減らす工夫をする

軽貨物の個人事業主は、日々の配送に加えて、確定申告や経費管理などの事務作業も自分で行わなければなりません。こうした負担を軽くするには、会計ソフトの活用や税理士への相談といったサポート体制の構築が効果的です。

負担を減らす工夫を取り入れることは、業務の効率が向上するだけでなく、財務処理のミスや申告漏れの防止にもつながります。

個人事業主ならではのデメリットを理解しておこう

個人事業主の軽貨物ドライバーには、自由な働き方や収入アップの可能性といった魅力がある一方で、収入の不安定さや補償の不十分さなど見過ごせないリスクも伴います。

こうした課題に備えるためには、取引先を複数持つ、保険に加入する、事務作業の負担を減らすといった工夫が欠かせません。安心して働ける環境を整えるためにも、あらかじめリスクを理解し、適切な対策を講じておくようにしましょう。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

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