インターネット通販の普及による宅配需要の増加や配送サービスの多様化などにより、軽貨物運送業の市場規模は急速に拡大しています。そんな中、黒ナンバー車で配達業務を行う軽貨物ドライバーたちは、物流業界を支える重要な役割を担っています。

しかし、交通事故の多発や一部のドライバーによる不適切な言動が影響し、黒ナンバー車にあまり良くないイメージを持つ方が多いのも事実です。「怪しい」「底辺」「危険」などと言われたり、苦情や通報が寄せられたりすることも少なくありません。

今回のコラムでは、黒ナンバー車が怪しい、底辺などと言われてしまう要因を解説していきます。苦情や通報を防ぐために、黒ナンバー車で業務にあたる軽貨物ドライバーができることもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

黒ナンバー車で配達する軽貨物・業務委託ドライバーは増えている

昨今は宅配需要が高まっており、置き配や時間指定といった配送サービスも多様化しています。こうした背景から、小回りや融通の利く輸送が可能であり、荷物を受け取るお客様の細やかな要望に対応できる軽貨物ドライバーのニーズは拡大傾向にあります。

街中を黒ナンバー車が走るのも、今や珍しい光景ではなくなってきました。

しかし、運送業に携わった経験がない方の中には、黒ナンバーをつけている車両がどんな役割を担っているのかを知らない方も。得体の知れない車両ということもあり、どうしても怪しまれやすいです。

ここからは、黒ナンバー車が怪しい、底辺などと言われてしまう理由をさらに深掘りしていきます。

黒ナンバー車が怪しい・底辺と言われる理由

軽貨物ドライバーが運転する黒ナンバー車が怪しい、底辺といわれてしまう理由として、以下の5点が挙げられます。

Point

・身元が不透明であることが多い
・身だしなみや接客マナーが悪いドライバーがいる
・車両を違法に改造しているドライバーがいる
・違法駐車・運転マナーの違反が多い
・交通事故が多発している

身元が不透明であることが多い

黒ナンバー車で配達するドライバーの多くは、個人事業主として自ら仕事を請けたり、運送会社と委託契約を結んだりしており、共通の制服を着用しないことが一般的です

しかし、配達ドライバーというと、見慣れた大手運送会社の制服姿を思い浮かべる方も多いでしょう。私服で業務にあたる黒ナンバー車のドライバーは、どうしても「何をしているのかわからない・得体が知れない=怪しい」という印象を持たれやすい傾向にあります。

身だしなみや接客マナーが悪いドライバーがいる

普通自動車免許があれば年齢や性別に関係なく誰でも事業を始められるというのは、軽貨物ドライバーの大きな魅力の1つです。

しかし、参入ハードルの低さゆえ、身だしなみやマナーを守らないドライバーがいたり、そもそも運送会社が明確な規定を定めていなかったりすることも珍しくありません

  • 派手な髪色や服装をしている
  • 華美なアクセサリーを着用している
  • 無愛想な対応をする
  • 荷物を雑に扱う
  • インターホンを連打する
  • お客様からの連絡を放置する

このようなドライバーも珍しくない他、無断で荷物を置き配する、荷物を乱暴に投げつけるといったケースも実際にあるようです。

もちろん、黒ナンバー車で配達するドライバー全員が上記に該当するというわけではありません。しかし、態度や身だしなみの悪いドライバーを1人見ただけで、「黒ナンバー車のドライバーは要注意」と一括りに悪い印象を抱かれてしまう可能性も考えられます

車両を違法に改造しているドライバーがいる

軽貨物ドライバーが最低限守っておきたいポイントの1つとして、保安基準を満たして安全性を確保した車両を運転することが挙げられます。

しかし、中には人とは違うおしゃれな車両を運転したいといった理由で、保安基準を満たせなくなる程車両の一部を改造してしまうドライバーも。

違法に改造され見た目が変化した車両はイメージの悪化だけでなく、事故や故障のリスク増大にも繋がります。

違法駐車・運転マナーの違反が多い

黒ナンバー車がネガティブな印象を持たれるきっかけとして特に多いのが、運転マナーの悪さです。

稼働スケジュールや担当エリアによって異なりますが、軽貨物ドライバーは膨大な個数の荷物を時間指定に間に合うよう配達しなければなりません。常に時間に追われながらの業務を余儀なくされ、以下のような雑な運転をしてしまうドライバーも多いです。

  • 速度制限・一時停止・信号を守らない
  • エンジンをかけたまま荷物をおろす
  • 急発進・急停車を繰り返す
  • スマートフォンを見ながら運転する

さらに昨今では、都心部を中心に駐車トラブルが非常に問題視されています。配達先の近くに駐車場が無く、やむを得ず禁止された場所に駐車してしまい、通行の妨げとなって苦情が寄せられるといったケースが多発しています。

軽貨物ドライバーが駐車禁止を取られる条件や罰則、駐禁を取られないようにするポイントなどについては、下記の記事で詳しく解説しています。気になる方は、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

交通事故が多発している

2016年から2021年にかけて、黒ナンバー車の事故件数は26.3%、死亡・重症事故は83.4%増加しています。

引用元:事業用自動車の安全対策について|国土交通省

黒ナンバー車の事故率の高さに大きく影響していると言われているのが、軽貨物ドライバーの労働環境の悪化です。近年問題視されている厳しい稼働スケジュールや過剰なノルマは、事故のリスクを大きく高める以下のような事態に繋がりかねません。

  • 時間に間に合うよう運転中に慌ててしまう
  • 最大積載量を超えた荷物の運送を強いられる
  • 無茶な稼働スケジュールにより疲労がたまり集中力が低下する
  • 悪天候の中無茶な運転をしての配達を余儀なくされる

ドライバー業の経験が十分でない方は特に、上記のようなケースに冷静に対応するのが難しく、事故を起こしてしまいやすいです。

近年は黒ナンバー車による事故が報道で取り上げられるケースも増えており、「怪しい」というイメージに繋がっている可能性が考えられます。

黒ナンバー車に対して実際に寄せられた苦情の声

インターネット上やSNSでは、黒ナンバー車に対して以下のような苦情の声が寄せられています。

  • 交差点で信号を渡ろうとしたら右折する黒ナンバー車が突っ込んできて暴言を吐かれた
  • スマートフォンを見ながらフラフラ走ったりいきなり止まったりする黒ナンバー車が多い
  • マナーの悪い黒ナンバー車から出てきたドライバーが髪を染めて柄の悪い格好をしていた
  • 黒ナンバーの軽自動車が庭に入ってきて堂々とUターンしていった
  • 黒ナンバー車から出てきた配達員が勝手に置き配をしていた
  • 側道から合流してくる黒ナンバー車が全く減速せず幅寄せしてきた

こうした声の中には、「これだから黒ナンバーは」などと黒ナンバー車を運転するドライバー全体を批判するものも多くありました。たとえ少数であっても、マナーの悪いドライバーによって黒ナンバー車全体のイメージが低下してしまっていることが伺えます。

怪しい黒ナンバー車に対する苦情・通報の窓口

同業者の怪しい黒ナンバー車に対しては、苦情や通報を入れることができます。主な窓口として挙げられるのは以下の機関です。

  伝えられる意見の内容 窓口
国土交通省 ・不正改造車(車検の基準を満たさないほど改造された車)
・不正車検車(車検を通過しているように見せかけた車)
など
通報・相談窓口一覧
運輸局 ・不正改造車(車検の基準を満たさないほど改造された車)
・迷惑黒煙車(著しく黒い黒煙を排出している車)
お問い合わせ
※関東運輸局の場合
警察 ・違法運送行為(危険運転など) ・緊急性がある場合:110番
・緊急性がない場合:#9110番
全日本トラック協会 ・トラック輸送に関する安全対策(危険運転・スピードリミッター不正改造など)
・トラック輸送に関する環境対策(アイドリングストップ・騒音など)
ご意見・情報提供について
荷主・運送業者 ・配送業務に関するクレーム(荷物が届かない・汚れていたなど) 各社のカスタマーサポート

上の表を参考に、苦情の内容や対象に応じて適切な機関に問い合わせてみてください。運輸局は各地方によって相談できる内容が異なるため、一度最寄りの機関のホームページを確認してみることをおすすめします。

怪しいと思われないためにドライバーができること

正しい交通ルールや身だしなみ、マナーを守って業務にあたっているにも関わらず、黒ナンバー車を運転しているというだけで怪しいと思われるのは避けたいものです。悪いイメージを持たれないために軽貨物ドライバーができることとして、以下が挙げられます。

  • 運転マナーを遵守する
  • 定期的に車両のメンテナンスを実施する
  • 業務中はこまめに休憩を取る
  • 丁寧な荷物の取り扱い・身だしなみ・接客を徹底する
  • 優良な運送会社と委託契約を結ぶ

運転マナー、身だしなみ、荷物の取り扱い、接客など、軽貨物ドライバーとして最低限とも言える基本的なルールやマナーを守るのは必須だと言えます。

加えて、事故のリスクを少しでも軽減するため、こまめに休憩を取って体調を整えたり、車両のメンテナンスを定期的に実施したりできると望ましいです。

【黒ナンバー車】真摯な運転・接客を意識しよう

黒ナンバー車に対して怪しい、危険といった良くない印象を抱く方がいるのも事実です。先述したようなドライバー個人の取り組みによって、こうした状況をすぐに大きく変えていくことは難しいかもしれません。

ただ、丁寧で真摯な対応を心掛ければ、お客様や担当する配送エリアの住民からの信頼を得られ、自ら働きやすい環境を作ることができます。

時間やノルマに追われる中でも、ドライバーとしての印象をアップさせられる働き方を可能な限り意識してみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。