軽貨物ドライバーや運送業者の皆さんの中には、車両購入の際に補助金や助成金は使えないのか、と気になっている方も多いのではないでしょうか。候補に挙がる制度の1つとして業務改善助成金が挙げられますが、この助成金は「賃金引上げ」と「生産性向上」を目的としており、使える範囲が明確に決まっています。
本記事では、運送業の皆さんが知りたい車両購入の可否を軸に、制度の基本と賢い活用方法をわかりやすく解説します。
業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が設備導入や業務効率化に取り組む際、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることを条件に、投資費用の一部が補助される制度です。ここでいう事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時給のことを指します。
申請には「賃金引上げ」と「設備投資」の計画を事前に作成する必要があり、計画に沿って事業を進め、完了後に報告することで助成金が支給されます。
助成金と補助金の違い
助成金と補助金はどちらも公的資金による支援ですが、制度の目的や受給のしやすさには大きな違いがあります。
助成金は主に厚生労働省が管轄し、雇用環境の改善など定められた要件を満たせば受給しやすい点が特徴です。募集期間も比較的長く、採択率も安定しています。
一方、補助金は経済産業省や自治体が行うものが多く、限られた予算の中で内容を審査して採択が決まる競争型の制度です。公募期間も短い場合が多く、採択率も制度によって大きく異なります。
業務改善助成金で配送車両は購入できる?

運送業における配送車両の購入においても、業務改善助成金への関心は高まっています。ただし、すべての車両購入が対象となるわけではなく、制度の趣旨に沿った投資であるかどうかが重要な判断基準となります。
ここでは、業務改善助成金で配送車両を購入できるのか詳しく見ていきましょう。
一定の条件を満たせば利用できる
業務改善助成金は、一定の条件を満たせば配送車両の購入にも利用できる可能性があります。重要なのは、車両の導入が業務効率の改善や生産性の向上につながること、そして事業場内最低賃金を規定額以上引き上げる計画を同時に実施することです。
申請をスムーズに進めるには、事前に計画を整理し、取り組み内容が要件を満たしているかを確認することが重要といえます。
車両購入が対象にならないケースもある
条件を満たしていても、業務改善につながらない増車や、単なる入れ替えを目的とした車両購入は対象外となる場合があります。
さらに、車種や使用目的によっては助成対象に含まれないケースもあり、制度の趣旨である生産性向上との結びつきが弱い投資は不支給となる可能性が高まります。
小規模事業者持続化補助金は車両購入に使える?

業務改善助成金は車両購入に利用できるケースもありますが、小規模事業者持続化補助金はどうでしょうか。ここでは、小規模事業者持続化補助金の概要と車両購入が原則対象外となる理由、さらに車両以外で活用できる具体的なケースについて解説します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路拡大や業務効率化に取り組む際に、その費用の一部を国が支援する制度です。新規顧客の開拓につながる商品・サービスの開発や、広告宣伝、展示会出展、店舗改装、機械導入など、幅広い取り組みが対象となります。
申請には事業計画書の作成が必須で、商工会議所または商工会を通じて手続きを行います。審査を経て採択される仕組みのため、制度の目的に沿った計画づくりが欠かせません。
原則的に車両購入には使えない
車両購入は原則として小規模事業者持続化補助金の補助対象外とされています。車両は資産性や汎用性が高く、補助金の目的に沿わないと判断されるためです。そのため、業務に必要な車両であっても、単なる入れ替えや増車では対象になりません。
ただし、事業の遂行に不可欠で補助事業のためだけに使用する車両など、一定の条件を満たす場合には例外的に認められるケースもあります。補助要領は年度によって内容が異なるため、最新の公募要領を必ず確認しましょう。
車両購入以外で活用可能なケースもある
小規模事業者持続化補助金を車両購入に利用することは原則的にはできませんが、業務改善や販路拡大につながる別の施策で活用できる可能性があります。
たとえば、オンライン受注体制の整備や広告制作、Webサイトの改善、店舗の改装、作業効率を高める機器の導入など、事業運営を支えるさまざまな取り組みが対象となり得ます。
車両そのものを購入できない場合でも、周辺業務を見直すことで事業全体の効率化や販路拡大につなげられる点が、この補助金の大きなメリットです。
【軽貨物】知っておきたい補助金・助成金

軽貨物ドライバーが個人事業主として仕事をするうえで、補助金や助成金をどのように活用できるかは重要な検討ポイントです。
ここでは、軽貨物ドライバーが利用できる可能性のある補助金・助成金を紹介します。
自治体が提供する配送・物流支援制度
自治体によっては、地域の物流体制を維持・強化する目的で、軽貨物ドライバー向けの支援制度を設けている場合があります。
環境性能の高い車両の導入を支援する補助金や、地域配送網を守るための事業継続支援、さらにデリバリー需要の増加に対応するための設備導入補助など、その内容はさまざまです。
全国一律の制度ではないものの、地域ごとに特色ある支援策が実施されているケースも多く、自身の事業に合う制度を見つけられる可能性があります。
開業時に活用できる補助金
自治体による支援に加えて、開業時の負担を軽くするための補助金を利用できるケースもあります。代表的な制度としては、創業支援補助金や各自治体が実施する起業家支援制度があり、事業計画の策定費用や設備導入、広報活動にかかる費用の一部が補助対象となります。
車両購入は対象外となるケースが多いものの、開業に必要な費用全体を抑えられるため、メリットは大きいといえるでしょう。
中古車を購入する場合の支援
中古車の購入については、多くの補助金・助成金が新品購入を前提としているため、対象外となるケースが一般的です。中古車は資産価値や状態にばらつきがあり、導入効果を客観的に示しにくいことが理由とされています。
ただし、一部の自治体では、中古車であっても環境基準を満たす車両や地域物流の維持に必要と判断される車両に対して支援を行う場合もあり、制度ごとに取り扱いが異なります。そのため、中古車購入で補助金を活用できるかについては、公募要領の詳細を確認することが大切です。
制度の特徴を理解して最適な支援策を選択することが大切
軽貨物ドライバーが業務改善助成金や小規模事業者持続化補助金を活用するためには、制度の内容や対象となる範囲を把握することが大切です。
車両購入が認められるケースは限られますが、設備導入や販路拡大、開業準備を支援する補助制度を適切に選べば、事業負担を大きく軽減できます。
制度の趣旨と要件を正しく理解し、自身の事業計画に最も適した支援策を見極めることが、持続的な事業運営につながる重要なポイントといえるでしょう。
この記事の執筆者

軽カモツネット編集部
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