軽貨物ドライバーの主な仕事は、個人宅や企業への荷物の配送ですが、少し変わった働き方として注目されているのが「引越し業」です。

軽貨物運送業の経験があるドライバーにとって、引越し業は新たな収益源として魅力的な選択肢となり得ます。ただし、成功するためには必要な手続きや注意点を事前に把握しておくことが大切です。

本記事では、軽貨物で引越し業を開業するための流れや必要な届出、案件単価の相場などを詳しく解説します。軽貨物ドライバーとして案件の幅を広げたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

軽貨物ドライバーによる引越し業の市場ニーズ

引越しサービスというと大手の業者が担うイメージが強いですが、昨今では軽貨物ドライバーが提供するケースも増えてきています。軽貨物ドライバーによる引越し業に対する需要は、以下のような要因から着実に増加しています。

大手業者よりも安く依頼できる

運搬する荷物の量や移動距離によって変動しますが、大手業者に引越しを依頼する場合、単身でも5〜10万円程度の費用がかかるのが一般的です。

一方で、軽貨物ドライバーによる引越しサービスは2〜5万円程度で対応できるケースが多く、費用面でのメリットが非常に大きいと言えます。

もちろん大手業者に比べると運べる荷物の量は限られますが、単身世帯や荷物が少ないケースでは、コストパフォーマンスに優れた選択肢として注目されています

個人間マッチングサービスが普及しつつある

近年では引越しに関する個人間マッチングサービスも増えており、軽貨物ドライバーと顧客を直接繋ぐプラットフォームが充実してきています。

個人事業主のドライバーに比較的容易に案件を依頼できる環境が整いつつあるのも、軽貨物ドライバーによる引越しサービスのニーズが高まっている要因の1つです。

【軽貨物】引越し業を始める際に必要な準備

軽貨物ドライバーが引越し業を始める際には、以下のような準備が必要となります。

事業の届出

引越し業を営む場合、通常は一般貨物自動車運送事業の届出を行い、緑ナンバーの車両で業務を行いますが、貨物軽自動車運送事業として始めることも可能です

両者には以下のような違いがありますが、届出や初期コストのハードルを踏まえると、個人で事業を始める方は「貨物軽自動車運送事業」として開業するのが良いでしょう。

  一般貨物自動車運送事業 貨物軽自動車運送事業
車両 比較的大型のトラック 軽トラック・軽自動車
要件 従業員5人以上・車両5台など複雑 従業員1台・車両1台から始められる
運べる荷物の量 多い 少ない

書類の提出

貨物軽自動車運送事業として引越し業を始める場合、その手続きは、軽貨物ドライバーとして通常の配送業務を始める際と基本的に同じです。管轄の運輸支局に以下のような書類を提出します。

  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書
  • 運賃料金表
  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証のコピー

なお、既に軽貨物運送業として届出を済ませていて軽貨物ドライバーとして配送業務にあたっている方は、新たな手続きは不要です。しかし、トラブル防止や業務内容の明確化のため、引越し業も行うことを運輸支局に伝えておくことが望ましいとされています

車両と設備の確保

引越し業務を行う際も、配送業務と同様に黒ナンバーを取得した軽貨物車両が必須です。車両を選ぶ際は、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 荷台の高さ・幅が十分に確保されている
  • 開口部が広い
  • 荷台の床が低い

道路交通法により、軽貨物車両の最大積載量は一律350kgまでと定められていますが、その範囲内でどれだけ多くの荷物を積めるかが非常に重要です。

単身者の引越しであっても、冷蔵庫・洗濯機・ベッドなどの大型家電や家具を積み込まなければならないため、荷台スペースの広い車両を選ぶことをおすすめします。

ドアの開口部が広く床面が低い車両は、重い荷物の積み下ろし作業を格段に楽にしてくれるため、作業効率や安全性の面でも大きなメリットがあります。

必要な作業用具の準備

引越し作業を効率的に行うためには、以下のような道具が必要になります。

  • 台車(折りたたみ式が便利)
  • 養生材(毛布・プラスチックダンボールなど)
  • ロープ・ベルト
  • 軍手・タオル
  • 梱包材(ダンボール・テープなど)

他にも、段ボールに内容物を記載する油性ペンや、段ボールや養生材を切るカッターナイフ、家具や家電の配置・搬入経路を確認する際に役立つメジャーなどがあると安心です。

保険の加入

引越し業では、家具や家電など高価で壊れやすい荷物を取り扱う機会が多いため、適切な保険への加入が不可欠です。

  • 自動車保険(自賠責保険・任意保険)
  • 貨物保険
  • 賠償責任保険

配送業務を行う軽貨物ドライバーには自動車保険や貨物保険への加入が推奨されますが、引越し業に従事するのであれば賠償責任保険にも加入しておくと安心です。作業中に家屋やお客様に損害を与えてしまうケースをカバーすることができます。

軽貨物ドライバーによる引越し業の単価の相場は?

軽貨物ドライバーが引越し案件を請け負う場合、相場は1〜5万円程度とされています。金額に幅があるのは、荷物の量や運搬距離によって料金が大きく変動するためです。

業務にかかる時間も案件によってまちまちで、荷物が多いケースや長距離の移動を伴う場合は1日がかりになることもあります。一方、荷物が少ない、お客様が積み下ろしを手伝ってくれるといったケースでは、2時間程度で完了することも珍しくありません。

引越しのニーズは季節や時期によって大きく変動するため、年間を通じて安定的に案件を確保するのは難しいのが現実です。1件ごとの作業時間にもバラつきがあることから、引越し業務だけで生活の基盤を築くのは容易ではありません。

配送業務と並行して引越し案件を取り入れるなど、効率的に稼ぐための工夫が求められます。

【軽貨物】引越し業の案件を探す方法

軽貨物ドライバーが請け負える引越し業の案件を探す手段としては、以下が挙げられます。

  • 求人サイト
  • 配送マッチングサービス

求人サイトには、ドライバーが引越し作業を担える案件が多数掲載されています。稼働時間や業務内容、報酬といった条件を比較検討した上で、自分に合った案件を選べるのが大きなメリットです。

近年普及している配送マッチングサービスの中には、引越し案件を取り扱っているものもあります。アプリやWeb上で手軽に情報を確認できるため、効率良く案件を探したい方にとって有効な手段と言えるでしょう。

軽貨物の引越し業に関するよくある質問

軽貨物の引越し業に関するよくある質問をまとめました。引越し業への参入を検討している軽貨物ドライバーの方はぜひ参考にしてみてください。

Q:軽貨物ドライバーが引越し業を始める際、新たに許可は必要ですか?

既に貨物軽自動車運送事業の届出を行っている場合、新たな許可は不要です。ただし、引越し業務を行うことを運輸支局に連絡しておくことが推奨されます。

Q:軽貨物の引越し業だけで生計を立てることは可能ですか?

軽貨物による引越し業は季節性があり、3月〜4月の繁忙期以外は案件数が限られる傾向があります。そのため、通常の配送業務との兼業を行うドライバーが多いのが現状です。安定した収入を得るためには、複数の業務を組み合わせることが効果的です。

Q:軽貨物の引越し業務に必要な資格はありますか?

特別な資格は必要ありませんが、普通自動車運転免許は必須です。また、引越安心マークなどの認定を取得することで、顧客からの信頼度を高めることができます。

参考:引越事業者優良認定制度(引越安心マークについて) | 全日本トラック協会 | Japan Trucking Association

引越し業を取り入れて案件の幅を広げよう

近年は市場ニーズの高まりとともに、個人事業主でも引越し業に参入しやすい環境が整いつつあります。案件の選び方やスケジュールの工夫次第で、軽貨物ドライバーが引越し業で収益を拡大させることも十分に可能です。

引越し業への参入を検討している軽貨物ドライバーの方は、本記事で紹介した内容を参考に、入念な準備を行った上でチャレンジしてみてください。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。